【鎮痛薬:NSAIDs】リウマチ科医がNSAIDsの使い方をわかりやすく解説

NSAIDsは、ステロイド以外の炎症を抑える薬です。関節の痛みを和らげますが、関節破壊をおさえる効果はありません。胃腸障害をはじめとして副作用が多い薬です。リウマチ薬の効果が出るまでのつなぎ、もしくは頓用での使用にとどめます。

長いこと痛み止めの薬を飲んでいるけど、大丈夫かしら?

鎮痛薬は痛みを和らげてくれるので、リウマチの治療ではなくてはならない薬です。
でも、使い方には注意が必要ですね。

今回は、リウマチ科医であるつかポンが【鎮痛薬(NSAIDs)】についてわかりやすく解説させていただきます。この記事を読めば、リウマチ治療におけるNSAIDsの正しい使い方がわかると思います。

この記事のまとめ
  • NSAIDsは、ステロイド以外の炎症を抑える薬です。
  • NSAIDsは、関節の痛みを和らげますが、関節破壊をおさえる効果はありません
  • NSAIDsは、胃腸障害をはじめとして副作用に注意が必要な薬です。
  • NSAIDsは、リウマチ薬の効果が出るまでのつなぎ、もしくは頓用での使用にとどめた方が良いでしょう。
目次

1. NSAIDsとは

NSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)「非ステロイド性抗炎症薬」のことです。

わかりやすくいうと、ステロイド以外の炎症を抑える薬で、エヌセイズと呼ばれています。一般に「痛み止めとして使われる薬です。

2. NSAIDsの作用

炎症物質のひとつである「プロスタグランジン」は、痛みや炎症を増強させる作用があります。

NSAIDsは、「プロスタグランジン」の合成に作用する「シクロオキゲナーゼ(COX)」を阻害することで、鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮します。

COXには、正常細胞に作用するCOX-1炎症細胞に作用するCOX-2があります。NSAIDsは、主にCOX-2を阻害することで、鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮します

  • 胃の粘膜を守る
  • 血小板を凝集する
  • 腎機能を保つ

カロナール®︎とNSAIDsの違い

カロナール®︎(アセトアミノフェン)は、脳に働きかけて熱を下げたり、痛みを抑える作用をもちます。

NSAIDsとの違いは、抗炎症作用がほとんどないことです。また、NSAIDsでよく見られる胃腸障害や腎障害の副作用が少ないことが特徴です。

ただし、大量に使うと肝臓に負担がかかることがあり注意が必要です。

3. NSAIDsの副作用

NSAIDsは副作用が多い薬としても知られており、注意が必要です。

基本的に量は少なく」「短期間のみ使うことを心がけましょう。

NSAIDsの主な副作用
  • アレルギー
    • 皮膚にブチブチが出たり、血圧が下がる
  • 喘息
    • 服用してから15~30分後に息が苦しい、咳が出るなどの発作がおこる
  • 胃腸障害
    • 胃十二指腸潰瘍・出血だけでなく、小腸や大腸にも病変をおこす
    • セレコックス®︎などのCOX-2阻害薬は、胃腸障害の副作用が少ない
  • 腎機能障害
    • 腎血流が低下することで、腎機能が悪化
  • 肝機能障害
    • まれに肝臓に負担がかかる
  • 浮腫、心不全
    • ナトリウムや水分を体にため込むことで、心臓が疲れやすくなる

特に気をつけないといけない副作用は胃・十二指腸の潰瘍や出血です。

下記に当てはまる方は胃腸障害のリスクが高いため、胃薬を併用したり、セレコックス®︎などのCOX-2選択的阻害剤をえらんだ方が安全でしょう。

  • 高齢(65歳以上)
  • 過去に胃・十二指腸潰瘍をおこしたことがある
  • ステロイドを内服中
  • 抗血小板薬、抗凝固薬を内服中

4. リウマチ治療におけるNSAIDs

4-1. NSAIDsの使い方

NSAIDsはリウマチ治療でよく使われている薬です。日常生活の中で感じる関節の痛みを和らげてくれるので、患者さんにとってはありがたい薬です。

ただし、NSAIDsを長期間飲み続けることは、副作用の面であまり勧められません。

NSAIDsの良い使い方
  1. リウマチ薬の効果が出てくるまでの一時的な使用
  2. リウマチは落ち着いているけど、たまに感じる関節痛への頓服での使用

大事なことは「NSAIDsには関節の破壊を抑える効果はないので、必ずリウマチ薬と併用する」ことです。

またリウマチ薬の効果が安定したら、NSAIDsを減量・中止するのが原則です。それでも痛みが続きNSAIDsがやめられない場合は、リウマチ薬の増量や追加、変更などを考えた方がよいでしょう。

4-2. よく使われるNSAIDs

NSAIDsにはCOX非選択的阻害剤COX-2選択的阻害剤の2種類があります。

それぞれに特徴があり、患者さんごとに使い分けています。

① COX非選択的阻害剤

COX非選択的阻害剤は、COX-1とCOX-1を共に阻害します。抗炎症・鎮痛作用が強いという特徴があります。

よく使われるCOX非選択的阻害剤
  • ロキソニン®︎(ロキソプロフェン)
  • ボルタレン®︎(ジクロフェナク)
  • ブルフェン®︎(イブプロフェン)

② COX-2選択的阻害剤

COX-2選択的阻害剤は、COX-2阻害の選択性が高い薬です。COX-1に影響しないため、胃に優しいという特徴があります。

よく使われるCOX-2選択的阻害剤
  • セレコックス®︎(セレコキシブ)
  • ハイペン®︎(エトドラク)
  • モービック®︎(メロキシカム)

最後まで読んでいただきありがとうございました!リウマチや血液の病気などの別の記事も参考にしていただけると幸いです。お疲れ様でした。

つか
医師・医学博士。
専門はリウマチ膠原病内科と血液内科です。
これまで大学病院や訪問診療で、関節リウマチと血液疾患の患者さんの診断・治療・自宅療養のサポートをして参りました。
リウマチと血液疾患で悩む患者さんに、笑顔と安心を届けることが私の使命と考えています。
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