
リウマチに新しい薬があるって聞きました!
私は使えますか?



JAK阻害薬の事ですね。
効果の高い薬ですが、いくつか注意するポイントがあります。
JAK阻害薬は、複数のサイトカインによる炎症を抑える免疫抑制薬です。生物学的製剤と同じように効果の高い内服のリウマチ薬ですが、これまでのリウマチ薬とは異なる副作用があるため注意が必要です。
この記事を読めば、JAK阻害薬の特徴や日常で気をつけるポイントが分かると思います。
- JAK阻害薬は、生物学的製剤と同じように効果の高い、内服のリウマチ薬です。
- JAK阻害薬は、炎症のスイッチを切ることで、複数のサイトカインによる炎症を抑える免疫抑制薬です。
- メトトレキサートや生物学的製剤を使っても関節の痛みや腫れが残る場合は、JAK阻害薬の出番です。
- 帯状疱疹などの感染症に加え、心血管イベント、血栓、癌などの副作用に注意しながら使用します。
1. JAK阻害薬とは?
JAK阻害薬は、生物学的製剤の次に登場した、効果の高い、新しいタイプの免疫抑制薬です。
リウマチでは、関節の中で炎症をおこす物質(炎症性サイトカイン)が過剰に作られています。炎症性サイトカインによって、関節の痛みや腫れ、変形がおこります。この「炎症性サイトカインを作るためのスイッチ」のようなものがJAK(ジャック)です。
JAK阻害薬は炎症のスイッチを切ることで、サイトカインが過剰に作られるのを抑え、関節の炎症や破壊を止める効果があります。
JAK阻害薬には以下のような特徴があります。
生物学的製剤の特徴


- 高い治療効果
- 生物学的製剤と同じ、もしくはそれ以上の効果が期待
- 効果が早い
- 早ければ数日、平均して2〜3週間
- 内服薬
- 生物学的製剤の皮下注射をさけたい方にオススメ
- 特有の副作用に注意
- 肺炎や帯状疱疹などの感染症や心血管系イベント、血栓、癌など
- 値段は少し高い
- 月 2.5〜5万程度(3割負担)


生物学的製剤は、1つのサイトカインをブロックして炎症を抑える注射薬です。
JAK阻害薬は炎症のスイッチを切ることで、複数のサイトカインよる炎症を抑える内服薬です。
生物学的製剤は「ピンポイントに」、JAK阻害薬は「幅広く」、サイトカインに作用します。
2. 適応:他のリウマチ薬で効果が不十分な場合
リウマチと診断されると、メトトレキサート(MTX)などのcsDMARDsや生物学的製剤などのリウマチ薬で治療していきます。しかし、それでも関節の痛みや腫れが残ってしまう場合があります。痛みや腫れが長期間続くと、関節が変形してしまいます。
そこで治療効果が不十分な場合に、JAK阻害薬を検討します。JAK阻害薬は単剤でも使えますが、生物学的製剤と同様にMTXとの併用することで治療効果が高まります。


- メトトレキサートなどのcsDMARDsや生物学的製剤を使っても、関節の痛みや腫れが残る






3. JAK阻害薬を始める前に


JAK阻害薬は誰にでも使える薬ではありません。
始める前に、確認するポイントを下記にまとめました。これらの項目を血液検査や胸部レントゲンで確認します。
JAK阻害薬を始める前のチェック項目


- 血液細胞のチェック
- 好中球数>500 /μL、リンパ球数>500 /μL、ヘモグロビン>8g /dl
- 感染症はないか?
- B、C型肝炎ウイルス
- 結核やカビの感染
- 腎臓や肝臓の機能低下はないか?
3-1. 禁忌:使わないほうがいい場合


以下に当てはまる人はJAK阻害薬の使用を控え、別のリウマチ薬で治療した方が良いでしょう。
治療が必要な感染症が見つかれば、先に感染症を治療します。
JAK阻害薬の禁忌
- 重篤な感染症(結核などの肺炎や急性B型肝炎など)
- 感染症が悪化する可能性があるため
- 妊婦、授乳中
- 赤ちゃんへの影響の可能性があるため
- 生ワクチン接種3〜6ヶ月以内
- その病気を発症してしまう可能があるため
3-2. 慎重投与
3-2-1. 過去の感染症
JAK阻害薬を使うことで、免疫力が低下し、過去にかかって今は落ち着いている感染症が暴れだすことがあります。これを再活性化といいます。
また、普段は問題とならない菌やカビの感染症にかかることがあります。これを日和見感染症といいます。その場合は、感染症を予防しながらJAK阻害薬を使います。
再活性化に注意した方がいい感染症
- 結核


- 慢性B型、C型肝炎ウイルス


- ニューモシスチス(カビ)


3-2-2. 心血管系イベント、血栓、癌






JAK阻害薬に特有の副作用で、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベント、肺塞栓症や下肢静脈血栓症などの血栓、がんがあります。
以下に当てはまる方は、JAK阻害薬以外のリウマチ薬で治療した方が安心でしょう。もし、JAK阻害薬を使わないとリウマチが抑えられない場合は、投与量を減らして慎重に使います。
JAK阻害薬を慎重に使った方がいい場合
- 高齢者
- 65歳以上
- 心血管系イベントのリスクが高い
- 過去に狭心症、心筋梗塞や脳卒中の診断を受けた
- 高血圧や糖尿病、高脂血症の治療中
- タバコを吸っている
- 血栓のリスクが高い
- 過去に血栓症の診断を受けた
- 癌のリスクが高い
- 過去に癌の診断を受けた、もしくは前癌病変がある場合
4. JAK阻害薬の特徴


現在、日本で承認されているJAK阻害薬は5種類あります。
- ゼルヤンツ®︎(トファシチニブ:TOF)
- オルミエント®︎(バリシチニブ:BAR)
- スマイラフ®︎(ペフィシチニブ:PEF)
- リンヴォック®︎(ウパダシチニブ:UPA)
- ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)
JAK阻害薬はそれぞれ作用するJAKの種類や代謝経路が異なります。
JAKにはJAK1、JAK2、JAK3、チロシンキナーゼ2(TYK2)という4種類があります。その中でも、JAK1が細胞性免疫、炎症、リンパ球分化、抗ウイルス作用全般に関わる中心的な役割を担っています。
ゼルヤンツ®︎ (トファシチニブ) | オルミエント®︎ (バリシチニブ) | スマイラフ®︎ (ペフィシチニブ) | リンヴォック®︎ (ウパダシチニブ) | ジセレカ®︎ (フィルゴチニブ) | |
---|---|---|---|---|---|
作用機序 | JAK1, 3阻害 | JAK1, 2阻害 | JAK1, 2, 3、Tyk2阻害 | JAK1阻害 | JAK1阻害 |
用法・用量 | 1日2回 | 1日1回 | 1日1回 | 1日1回 | 1日1回 |
禁忌 | 重度の肝障害 | 重度の腎障害 | 重度の肝障害 | 重度の肝障害 | 重度の肝障害、腎障害 |
値段 (月額、3割負担) | 約2.5〜5万 | 約2.5〜5万 | 約2~5万 | 約2.5〜5万 | 約2.5〜5万 |
4-1. ゼルヤンツ®︎(トファシチニブ:TOF)


- 特徴
- 日本で1番最初に発売されたJAK阻害薬
- JAK1、3を阻害
- 副作用
- 肺炎や帯状疱疹などの感染症、悪性腫瘍、消化管穿孔、肝障害、腎障害、血球減少、間質性肺炎など
- 薬の値段
- 約2.5〜5万/月(3割負担)
- 使い方
- 1回5mgを1日2回内服
- 高齢、低体重、腎機能障害や肝機能障害の場合は5mg1日1回に減量
4-2. オルミエント®︎(バリシチニブ:BAR)


- 特徴
- JAK1、2を阻害
- 副作用
- 肺炎や帯状疱疹などの感染症、悪性腫瘍、消化管穿孔、肝障害、腎障害、血球減少、間質性肺炎など
- 薬の値段
- 約2.5〜5万/月(3割負担)
- 使い方
- 1回4mgを1日1回内服、効果があれば2mgに減量検討
- 高齢、低体重、腎機能障害や肝機能障害の場合は2mgに減量
4-3. スマイラフ®︎(ペフィシチニブ:PEF)


- 特徴
- JAK1、2、3、Tyk2を広く阻害
- 肝臓で代謝されるので、腎機能が悪い人に使いやすい
- 帯状疱疹のリスクがやや高い(12%)
- 副作用
- 肺炎や帯状疱疹などの感染症、悪性腫瘍、消化管穿孔、肝障害、腎障害、血球減少、間質性肺炎など
- 薬の値段
- 約2〜5万/月(3割負担)
- 使い方
- 1回150mgを1日1回内服
- 高齢、低体重では100mgに減量
- 肝機能障害では50mgに減量
4-4. リンヴォック®︎(ウパダシチニブ:UPA)


- 特徴
- JAK1を選択的に阻害
- 副作用
- 肺炎や帯状疱疹などの感染症、悪性腫瘍、消化管穿孔、肝障害、腎障害、血球減少、間質性肺炎な
- 薬の値段
- 約2.5〜5万/月(3割負担)
- 使い方
- 1回15mgを1日1回内服
- 高齢、低体重、腎機能障害の場合は7.5mgに減量
4-5. ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)


- 特徴
- JAK1を選択的に阻害
- 帯状疱疹の頻度が最も少ない(0.2%)
- 副作用
- 肺炎や帯状疱疹などの感染症、悪性腫瘍、消化管穿孔、肝障害、腎障害、血球減少、間質性肺炎など
- 薬の値段
- 約2.5〜5万/月(3割負担)
- 使い方
- 1回200mgを1日1回内服
- 高齢、低体重、腎機能障害の場合は100mgに減量
5. JAK阻害薬で気をつけるポイント
5-1. 帯状疱疹に注意
JAK阻害薬の副作用に、帯状疱疹というウイルスの感染症があります。
帯状疱疹を発症する頻度は高くありませんが、激しい神経痛が長引いたり、場合によっては顔面神経麻痺、視力低下、難聴になることがあるので注意が必要です。皮膚に小さな水ぶくれが集まって出てきたり、ピリピリとした神経痛を感じた場合は、帯状疱疹の可能性があるためなるべく早めに病院を受診してください。
また、帯状疱疹はワクチンで予防できるので、かかりつけの先生に相談してみてください。
5-2. 薬の飲み合わせに注意


JAK阻害薬は、生物学的製剤やプログラフ®︎(タクロリムス)などの免疫抑制薬とは併用しません。なぜなら、他の免疫抑制薬と併用することで、感染症のリスクが増加するからです。
また、ゼルヤンツ®︎とリンヴォック®︎は肝臓のCYP3A4酵素で代謝されます。グレープフルーツや他の内服薬との飲み合わせには注意が必要です。お薬手帳で確認してもらいましょう。
参考文献
最後まで読んでいただきありがとうございました!リウマチや血液の病気などの別の記事も参考にしていただけると幸いです。お疲れ様でした。