【メトトレキサートを使っても関節痛が続く場合】リウマチ科医がMTXの次のステップの治療についてわかりやすく解説

関節の痛みや腫れが続くと、関節が破壊されて変形してしまいます。MTXだけでリウマチが寛解となる患者さんは、2人に1人。次の治療に進む前に、MTXの効果を最大限に発揮できているか、を確認します。MTXの次のステップの治療には① 生物学的製剤 ② JAK阻害薬 ③ csDMARDs があります。

MTXを徐々に増やしているけど、まだ痛みがとれません。
今のままでいいのかしら。

MTXだけでリウマチが寛解となるのは、約半数です。
次のステップの治療を考える必要がありますね。

メトトレキサート(MTX)は、リウマチと診断された時に、最初に使う薬です。リウマチ治療の中心的な薬ですが、MTXだけでリウマチが寛解となるのは2人に1人、と言われています。約半数の人は、MTXの次のステップの治療が必要になります。

この記事を読めば、MTXの次のステップに行く前のチェックポイントや治療の選択肢や選び方がわかると思います。

この記事のまとめ
  1. 関節の痛みや腫れが続くと、関節が破壊されて変形してしまいます。
  2. MTXだけでリウマチが寛解となる患者さんは、2人に1人
  3. 次の治療に進む前に、MTXの効果を最大限に発揮できているか、を確認します。
  4. MTXの次のステップの治療には① 生物学的製剤JAK阻害薬csDMARDs があります。
目次

1. 関節の痛みや腫れが続くと…

リウマチ治療でMTXを続けているけど、関節の痛みや腫れが続いてしまう場合があります。MTXだけでリウマチが寛解となる患者さんは2人に1人と言われています。

関節の痛みや腫れが残っているということは、「関節の中で炎症が続いている可能性が高い」ということです。このまま関節の痛みや腫れを我慢してしまうと、関節の炎症を放置してしまうことになるので関節の破壊や変形が進んでしまうことになります。

つまり、リウマチの治療を強化する必要があります。

2. MTXの次のステップに進む前に

まずは、次のステップの治療に進む前に今の治療の見直しが必要です。以下の点をチェックしてから、次のステップに進みます。

MTXの次のステップに進む前のチェックポイント
  • MTXの効果を最大限に引き出す
    • 量を増やす
    • 分割で内服する
    • 皮下注射に変える
  • 禁煙と歯周病の治療を行う
  • 服用中のサプリメントを確認する

2-1. MTXの効果を最大限に引き出す

リウマチ治療で最も大切なポイントは、「MTXの効果を最大限に引き出す」ことです。

MTXの効果を上げるには、以下の方法があります。MTXの次のステップに進む前に、検討してみると良いかもしれません。

①MTXの量を増やす

MTXは、最大8錠/週(16mg)まで増量できます。MTXを増やして効果があれば、さらに増やすことでより高い効果が得られます。

効果と副作用のバランスを見ながら、MTXの増量も考えましょう。

エスケープ現象

  • MTX治療により十分効果が得られていても、経過中に治療効果が減弱することがあり、これをエスケープ現象と言います。
  • その場合は、MTXを増量すると再び安定することが多いです。

②MTXを分割で内服する

MTXが5錠(10mg)以上の場合は、分割で内服した方がカラダへの吸収が良いと報告されています。

また、MTXが5錠を超えてくると吐き気や口内炎、肝障害などの副作用が問題となる場合があります。その場合、分割で内服した方が、これらの副作用は軽くなります

もし、副作用で増量できない場合は、分割で内服する方法が良いかもしれません。

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③ MTXを皮下注射に変える

2022年11月にMTXの皮下注射である「メトジェクト®︎」が発売されました。メトジェクト®︎は内服薬と比べて、吐き気の副作用が少ないのが特徴です。

また、MTX 10mg/週以上の場合、注射より内服の方がカラダへの吸収が良く効果が高いと報告されています。

薬価は月3000円前後(3割負担)であり、生物学的製剤やJAK阻害薬と比べて安くなっています。

2-2. 禁煙と歯周病の治療を行う

喫煙、歯周病はリウマチの発症に関わるだけでなく、リウマチ治療の効果を弱めてしまいます

禁煙と定期的な歯科治療も並行して行いましょう。

2-3. 服用中のサプリメントを確認する

ビタミンのサプリメントは、MTXの効果を弱めてしまいます。特に、葉酸が多く含まれているサプリメントは避けましょう。

3. MTXの次のステップの治療

MTXを増やしても関節の痛みや腫れが続いてしまう場合や吐き気や肝障害などの副作用でこれ以上MTXが増やせない場合は、次のステップの治療に進みます。

大きく分けると、①生物学的製剤 ②JAK阻害薬 ③csDMARDs の3つの方法があります。

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生物学的製剤JAK阻害薬csDMARDs
投与方法皮下注射内服内服
効果
値段
(1ヶ月あたりの値段、3割負担)
やや高い
約2〜4万円
高い
約5万円
普通
約1000〜5000円
リウマチ薬の比較

これらの治療は、基本的にMTXと併用する形で開始します。なぜなら、併用した方が効果が高いことが証明されているからです。

どの種類の薬を選択するかは、リウマチの病状や患者さんの持病、経済的状況などを考えて、患者さんごとに決めています。実際の外来では、治療効果と経済的負担のバランスのよい、生物学的製剤を選ばれる方が多い印象です。

主治医の先生とよく相談して、ご自身の納得のいく治療を選択してください。

3-1. 生物学的製剤

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エンブレル
エタネルセプト)
ヒュミラ
アダリムマブ)
シムジア
(セルトリズマブ)
シンポニー
(ゴリムマブ)
ナノゾラ
(オゾラリズマブ)
アクテムラ
(トシリズマブ)
ケブサラ
(サリルマブ)
オレンシア
(アバタセプト)
TNF阻害薬TNF阻害薬TNF阻害薬TNF阻害薬TNF阻害薬抗IL-6抗体抗IL-6抗体T細胞活性化抑制
注射間隔1週2週2週 or 4週4週4週2週2週1週
値段
(月額、3割負担)
約2万円約2.5万円約3.5万円約3.5万円約3.5万円約2万円約3万円約3.5万円
即効性
生物学的製剤の比較表

生物学的製剤は、リウマチの薬の中で効果が高い薬です。

生物学的製剤には、以下の特徴があります。どの薬を選択するかは、注射の頻度や効き目の早さ、値段などを総合的に考えて、主治医の先生と決めると良いでしょう。

生物学的製剤の特徴
  • 高い治療効果
    • 寛解率 20〜40%(寛解:関節の痛みがなく、生活に支障がない状態)
  • 効果が早い
    • 薬によっては、開始したその日から効果を実感することも
  • 豊富なエビデンス
    • 関節破壊の抑制と生命予後の改善(生命予後:あとどのくらい元気でいられるか?)
  • 皮下注射もしくは点滴
    • タンパク質から出来ているので、内服すると消化・分解されてしまう
  • 値段が少し高い
    • 月 2〜4万程度(3割負担)
  • 製剤は8種類、どれも同等の効果
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3-2. JAK阻害薬

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ゼルヤンツ
(トファシチニブ)
オルミエント
(バリシチニブ)
スマイラフ
(ペフィシチニブ)
リンヴォック
(ウパダシチニブ)
ジセレカ
(フィルゴチニブ)
作用機序JAK1, 3阻害JAK1, 2阻害JAK1, 2, 3, Tyk2阻害JAK1阻害JAK1阻害
用法・用量1日2回1日1回1日1回1日1回1日1回
禁忌重度の肝障害重度の腎障害重度の肝障害重度の肝障害重度の肝障害、腎障害
値段
(月額、3割負担)
約2.5〜5万約2.5〜5万約2~5万約2.5〜5万約2.5〜5万
JAK阻害薬のまとめ

JAK阻害薬は、リウマチの薬の中で生物学的製剤と同等の効果のある薬です。

JAK阻害薬には、以下の特徴があります。どの薬にするかは、JAK阻害の選択性や内服のしやすさで決めると良いでしょう。

JAK阻害薬の特徴
  • 高い治療効果
    • 生物学的製剤と同じ、もしくはそれ以上の効果が期待
  • 効果が早い
    • 早ければ数日、平均して2〜3週間
  • 内服薬
    • 生物学的製剤の皮下注射をさけたい方にオススメ
  • 特有の副作用に注意
    • 肺炎や帯状疱疹などの感染症や心血管系イベント、血栓、癌など
  • 値段が少し高い
    • 月 2.5〜5万程度(3割負担)
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3-3. csDMARDsの追加

csDMARDsは、リウマチの治療でこれまでに多く使われてきた、歴史のある薬です。

csDMARDsには、以下の特徴があります。どの薬にするかは、患者さんの持病を考えながら決めています。

csDMARDsの特徴
  • 安定した治療効果
    • MTXに追加することで上乗せ効果
  • 効果はゆっくり
    • 1〜2ヶ月程度
  • 豊富なエビデンス
    • これまで多くのリウマチ患者さんに投与
  • 内服薬
    • MTXに追加で内服すれば良い
  • 値段が安い
    • 約1000〜5000円/月程度(3割負担)
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最後までお読みいたただき、ありがとうございました。

つか
医師・医学博士。
専門はリウマチ膠原病内科と血液内科です。
これまで大学病院や訪問診療で、関節リウマチと血液疾患の患者さんの診断・治療・自宅療養のサポートをして参りました。
リウマチと血液疾患で悩む患者さんに、笑顔と安心を届けることが私の使命と考えています。
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