
病院で「ビタミン不足による貧血です。」といわれました。
食事はバランスよく摂っているつもりなんだけど。



ビタミンは血液を作るために必要な材料です。
食事で取れていても、うまく吸収できていないこともあります。
- 巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12もしくは葉酸が不足することで生じる貧血です。
- ビタミンB12や葉酸は、吸収障害や摂取不足、需要の増加が原因で不足します。
- 巨赤芽球性貧血は、問診と血液検査で診断します。
- 巨赤芽球性貧血の治療は、不足しているビタミンB12や葉酸を補うことです。
1. 巨赤芽球性貧血はどんな病気?


巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12もしくは葉酸が不足することで生じる貧血です。
ビタミンB12や葉酸は、細胞のDNA合成に関わる重要なビタミンB群です。これらが不足すると赤血球の成長に異常がおこり、貧血になります。
ビタミンB12欠乏による貧血は、人口10万人あたり年間1~2人程度発症する、といわれています。
葉酸欠乏が原因となるケースは、さらに少ないと考えられています。
2. 巨赤芽球性貧血の原因
ビタミンB12と葉酸では、不足の原因が異なる場合があります。
2-1. ビタミンB12欠乏の原因


ビタミンB12は主に動物性食品に多く含まれ、胃から分泌される内因子というタンパク質とくっついて、回腸で吸収され、肝臓に蓄えられます。動物性食品の中でもレバー、アサリ、しじみ、さんまなどに多く含まれます。
よって、以下のような場合はビタミンB12が欠乏しやすくなります。
- 吸収障害
- 胃の全摘 … 胃がんや胃潰瘍などで胃をすべて摘出した数年後に発症
- 萎縮性胃炎(悪性貧血) … 内因子の分泌障害がおこる
- 回腸の異常


- 摂取不足
- 動物性食品の制限(菜食主義:ビーガン)
- 過度なダイエット


胃切除後の貧血は忘れた頃に


- ビタミンB12は、約5年間肝臓に蓄えられます。よって、吸収障害が起こってもすぐに貧血はおこりません。
- 胃の全摘をしたとしても、貧血が見られるのは術後5年程度経ってからになります。
2-2. 葉酸欠乏の原因


葉酸は鶏レバー、菜の花、モロヘイヤ、ブロッコリーなどに多く含まれ、小腸で吸収されます。
よって、以下のような場合は葉酸が欠乏しやすくなります。
- 吸収障害
- 野菜を食べない偏食
- アルコールの大量摂取
- 消化器疾患による吸収不良


- 薬剤
- リウマチの治療薬であるメトトレキサートなど


- 需要の増加
- 妊娠期、授乳期


3. 巨赤芽球性貧血の症状
巨赤芽球性貧血は、大きく分けると① 貧血症状 ② 消化器症状 ③ 神経症状 に分かれます。
- 貧血
- 動悸、息切れ、疲労感


- 消化器症状
- 舌乳頭の萎縮
- ハンター舌炎 … 味覚障害や舌の痛みを伴う炎症
- 萎縮性胃炎


- 神経症状
- 手足のしびれや痛み、筋力低下
- 認知症や錯乱
- 意識障害


動悸や息切れ、疲労感といった貧血の症状が現れます。その他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎など消化器にも異常がおこります。
また、ビタミンB12欠乏では神経に障害がおこり、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられます。
4. 巨赤芽球性貧血の診断


巨赤芽球性貧血は、問診と血液検査で診断します。
問診では、過去の胃の手術歴やアルコール摂取量、食生活の偏り、メトトレキサートなどの内服薬を確認します。
血液検査では、ヘモグロビンの低下とともに、赤血球の大きさ(MCV)が大きくなるという特徴があります。これを大球性貧血といいます。
これに加え、ビタミンB12もしくは葉酸が低値なら、診断は確定します。
- Hb < 12 g/dl(基準値 Hb >12 g/dl)
- MCV > 100 fl(基準値 80 < MCV < 98 fl)
- MCV > 130 flならほぼ間違いなく巨赤芽球性貧血
- 網赤血球 ↓
- ビタミンB12 ↓ or 葉酸 ↓
他にも白血球や血小板といった他の血液細胞の産生にも影響するので、すべての血球が減少する「汎血球減少症」になる場合もあります。
大球性貧血でビタミンB12や葉酸が正常なら、別の病気を考えます。場合によっては、骨髄検査などの精密検査が必要になるかもしれません。
大球性貧血の原因となる主な病気
- 巨赤芽球性貧血
- 骨髄異形成症候群
- 肝硬変
- 甲状腺機能低下症
- アルコール多飲
- 白血病
- 網赤血球増加
5. 巨赤芽球性貧血の治療


巨赤芽球性貧血の治療は、不足しているビタミンB12や葉酸を補うことです。ただし、巨赤芽球性貧血の原因によって、ビタミンの補充方法が異なります。
5-1. ビタミンB12欠乏
- メチコバール®︎(一般名:メコバラミン)




吸収障害のない方には、ビタミンB12の内服で治療します。
吸収障害のある方にはビタミンB12の筋肉注射で治療します。最初は週1〜2回程度で開始して、貧血改善後も3〜4ヶ月毎に生涯継続して投与する必要があります。途中でやめてしまうとまた貧血となるので、通院を継続しましょう。
また、ビタミンB12の補充により正常に赤血球が作られるようになると、次は鉄の不足がおこることがあります。治療中は、鉄分のチェックとともに、食生活の見直しも大切です。
悪性貧血には胃カメラを


- 内因子の分泌障害によっておこるビタミンB12欠乏の巨赤芽球性貧血(悪性貧血)では、約10%の頻度で胃がんを合併することが知られています。
- 自覚症状がなくても、必ず胃カメラ(上部消化管内視鏡)をお願いしています。
5-2. 葉酸欠乏
- フォリアミン®︎(一般名:葉酸)


葉酸欠乏の場合、葉酸製剤の内服で対応できることがほとんどです。
6. 日常生活で気をつけること
巨赤芽球性貧血と診断された場合には、長期にわたり治療や経過観察が必要になります。
以下の点に注意して、病気と上手に付き合っていきましょう。
- バランスのいい食生活を心がけましょう
- ビタミンB12の多い食品 … レバー、アサリ、しじみ、さんまなど
- 葉酸の多い食品 … 鶏レバー、菜の花、モロヘイヤ、ブロッコリーなど


- 適度な飲酒量にしましょう


- 定期的な通院で血液検査と治療をしましょう。
- 特に、胃を全摘出した人は数年後、忘れた頃に貧血となることが多いです。
- 巨赤芽球性貧血と診断された人は、生涯治療が必要となる場合もあります。


- 妊娠中や授乳中は、食事のほかサプリメントなど活用しましょう。
- 胎児や赤ちゃんのために、ビタミンB12や葉酸が不足しやすい状態です。


最後までお読みいたただき、ありがとうございました。