【関節痛】リウマチ科医が原因や対処法をわかりやすく解説

関節とは、骨と骨をつなぐ部分を指します。関節は、関節包に包まれており、その中に滑膜や滑液、軟骨などが含まれています。関節痛の原因は、炎症と炎症以外の原因に分けられます。関節痛の原因には様々な病気があるので、一度は病院で調べてもらいましょう。

最近、指の関節が痛むことがあるんです。
もしかしてリウマチですか?

それは心配ですね。
関節痛の原因はリウマチ以外にも色々な病気があります。
関節痛が続くときは、一度は病院で調べてもらいましょう。

関節の痛みは、誰もが一度は経験したことがあると思います。多くは自然に治りますが関節痛が続く場合、様子を見ていいのか、治療が必要なのかをご自身で判断するのは難しいと思います。この記事を読めば、関節痛の原因や関節痛が続く際に何科を受診すればいいか、がわかると思います。

この記事のまとめ
  1. 関節痛の原因は、炎症炎症以外の原因に分けられます。
  2. 炎症による関節痛は、感染症痛風関節リウマチなどの膠原病などが原因です。
  3. 炎症以外による関節痛は、ケガ加齢による変形性関節症ホルモン異常精神的ストレスなどが原因です。
  4. 関節痛の原因には様々な病気があるので、一度は病院で調べてもらいましょう。
目次

1. 関節痛について

関節とは、骨と骨をつなぐ部分のことを指します。

手の指や手首、肘、肩、膝、足首、あごなど、人の体にはいくつもの関節があります。これらの関節を動かすことで、物をつかむ、歩く、しゃがむ、など人間が生活する上で必要な動作が可能になります。

関節は、関節包という袋のようなものに包まれています。骨と骨は靭帯という伸び縮みできる組織で結ばれて2つの骨が離れないように結び付けています。
関節包の内側には、滑膜という膜が関節の内側に張りめぐらされています。滑膜では、関節の動きをなめらかにする関節液(滑液)を作っています。これによって関節はなめらかな動きが可能になります。
また、それぞれの骨の先端は、軟骨という柔らかいクッションで覆われ、二つの骨が当たる衝撃を和らげています。

これらの組織のどこかに障害が起きると、関節痛を自覚します。

2. 関節痛の原因

関節痛の原因は、大きく二つあり、①「炎症」による痛み ②「炎症以外」による痛み に分けられます。

関節で炎症が起きると、熱感・赤み・腫れ・痛みが起こります。この状態を関節炎といい、炎症を起こしている関節はブニブニと柔らかく触れ、押すと痛みを感じます。

関節痛の原因
  • 炎症による関節痛
    • 感染症
      • 細菌、ウイルスなど
    • 結晶沈着
      • 痛風、偽痛風
    • 膠原病
      • 関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど
  • 炎症以外による関節痛
    • ケガ
      • 骨折、脱臼、捻挫など
    • 加齢
      • 変形性関節症
    • ホルモンの異常
      • 女性ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンの変化
    • 精神的ストレス
スクロールできます
急性の経過慢性の経過
一つの関節が痛むケガ
化膿性関節炎
痛風偽痛風
変形性関節症
複数の関節が痛むウイルス性関節炎関節リウマチなどの膠原病
変形性関節症
ホルモンの異常
精神的ストレス
関節痛の分布と経過による原因

3. 一つの関節が痛む場合

一つの関節が痛む場合は、主に以下の原因が考えられます。

① ケガ

脱臼や骨折などのケガをすると、関節が変形します。
そのまま放置すると変形したまま固まってしまうことがあるので、すぐに整形外科で手当をしてもらいましょう。

② 変形性関節症

  • 変形性関節症とは、年齢とともに関節の軟骨が減り骨と骨とが当たり痛みを感じる病気です。40歳以降の女性に多く見られます。
  • 起こりやすい関節 … 手の指や親指の付け根
  • 変形性関節症が進行すると関節が変形するため、関節リウマチとよく間違われます。以下の2点がリウマチとの違いです。
    • 関節の骨がゴツゴツとトゲのように出っ張り、太く硬くなる
    • 手の指の第1関節が痛む
  • 治療 … 整形外科で鎮痛薬や関節内注射、リハビリを行い、改善がない場合は手術を検討します。

③ 痛風

  • 痛風とは、尿酸の結晶が関節内で炎症を起こす病気です。
  • 起こりやすい関節 … 足の親指の付け根に多く(約75%)、他には足首や足の甲や膝など
  • 関節リウマチとの違い … 一つの関節に、急に強い痛みや腫れ、発赤が起こります。また、圧倒的に男性に多い病気です。
  • 治療 … 発作時は整形外科で鎮痛剤を、再発予防には内科で尿酸降下薬を投与します。

④ 偽痛風

  • 偽痛風(ぎつうふう)とは、ピロリン酸カルシウム二水和物の結晶が関節内で炎症を起こす病気です。痛風と同じような関節炎を起こしますが、高尿酸血症が見られないことから名付けられました。
  • 起こりやすい関節 … に多く、他には肩や足首、手首などにも起こります。
  • 関節リウマチとの違い … ご高齢の方大関節急に強い痛みや腫れ、発赤が起こります。ときに複数の関節が同時に痛むこともあります。
  • 治療 … 発作時は鎮痛剤を投与します。

⑤ 化膿性関節炎

  • 化膿性(かのうせい)関節炎とは、細菌が皮膚表面の傷などから関節の内部に侵入し、関節で炎症を起こす病気です。
  • 起こりやすい関節 … 膝に多く、ほかには股関節、肩、足首など
  • 関節リウマチとの違い … 一つの関節に、急に強い痛みや腫れ、発赤が起こります。
  • 治療 … 整形外科で関節に針を刺して、細菌を確認することで診断し、抗生剤を投与します。

4. 複数の関節が痛む場合

複数の関節が痛む場合は、以下の原因が考えられます。

① 関節リウマチ

関節リウマチ
  • 関節リウマチは、自分の免疫がまちがえて関節に炎症を起こしてしまう、多発性の関節痛を起こす代表的な病気です。
    放っておくと、軟骨や骨がこわれて関節が変形してしまいます。
  • 起こりやすい関節 … 手の指や手首に多いが、膝や足首、足の指などにも見られる
  • 関節以外の症状が目立たないのも特徴です。
  • 治療 … 内服薬や皮下注射の投与を行います。
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② 脊椎関節炎

  • 脊椎関節炎とは、手足の関節だけでなく、背骨や仙腸関節節などに関節炎を起こす病気です。
  • 関節リウマチとの違い
    • 足首や膝などの下肢に炎症を起こしやすい
    • 腰痛や背部痛がある
    • 手の指の第一関節も腫れる
    • 関節以外の症状がある
      • 皮膚症状(乾癬)
      • 下痢や血便(炎症性腸炎)
      • おりものの変化、排尿時の痛みなど(クラミジア感染症)
  • 治療 … 内服薬や皮下注射の投与を行います。
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③ リウマチ以外の膠原病

  • 膠原病とは、全身の皮膚や内臓に炎症を起こす自己免疫性疾患の総称です。
  • 代表的な膠原病
    • 全身性エリテマトーデス:発熱や皮疹、関節痛、腎炎などが起こす
    • シェーグレン症候群:目や口が渇く
    • 全身性強皮症:皮膚や内臓(肺や血管など)が硬くなる
    • 筋炎:全身の筋肉や皮膚に炎症を起こす
    • 混合性結合組織病:全身性エリテマトーデス様・強皮症様・筋炎のうち2つ以上の症状が混在
    • 血管炎:全身の血管に炎症を起こす
  • 関節リウマチとの違い … 皮膚の症状や目や口の渇き、腎障害などの関節以外の症状が目立ちます。また、血液検査では抗核抗体が陽性になったりします。
  • 治療 … 免疫抑制剤などの薬で病気を抑えます。

④ リウマチ性多発筋痛症

  • リウマチ性多発筋痛症とは、首や肩、腰、太ももなど体の中心にある筋肉や関節に痛みやこわばりを生じる病気です。
  • 症状は「痛みで寝返りがうてない」「朝、全身が痛くて起きられない」「両肩が痛くて上がらない」などがあります。
  • 特徴 … 70~80歳前後のご高齢の方に多く発症します。発病が比較的急激で2週間以内に症状が完成します。また、発熱などの全身症状と伴い、血液検査ではCRPが高度に上昇します。
  • 治療 … 副腎皮質ステロイドの投与を行います。

⑤ ホルモンの異常(産後、更年期障害など)

  • 女性では、産後や更年期に女性ホルモンのバランスが大きく変化します。このホルモンバランスの乱れによって、関節痛が現れることがあります。
  • 甲状腺機能低下症などの内分泌疾患や副腎皮質ステロイドで治療中の方が減量している時にも、ホルモンの変化によって関節痛を感じることがあります。
  • 関節リウマチとの違い … 手足のほとんどの関節に痛みを感じますが、関節が腫れることはありません
  • 治療 … 更年期障害や甲状腺機能低下症に対してホルモンを補充します。

⑥ ウイルス性関節炎

  • ウイルス性関節炎とは、ウイルスの感染により関節内に炎症を起こす病気です。 
  • 関節リウマチとの違い … 発熱や喉の痛み、皮疹と共に、痛みや腫れなどの症状が関節に左右対称に生じることが多いのが特徴です。
  • 治療 … ウイルス感染が軽快するまで、鎮痛剤などで様子を見ます。

5. 部位別の関節痛の原因

① 手の指の痛み

② 手首の痛み

③ 肘の痛み

④ 肩の痛み

⑤ 膝の痛み

5-6. 足首の痛み

考えられる原因

5-7. 足の指の痛み

考えられる原因

5. 関節痛は何科を受診すればいいの?

このように、関節痛の原因は様々です。鎮痛剤で様子を見てよいものもあれば、早急に治療が必要なものもあります。

ご自身で判断するのは難しいと思いますので、関節痛でお困りの際は1人で悩まずに、クリニックや病院で調べてもらいましょう。

  • ぶつけたり、捻ったりした後の関節痛
    • 骨や腱の損傷の可能性があるので、整形外科で診てもらいましょう
  • 一つの関節が痛む
    • 化膿性関節炎、痛風、変形性関節症(膝の場合)などの可能性があるので、整形外科で診てもらいましょう
  • 複数の関節が痛む
    • 関節リウマチや他の膠原病の可能性があるので、リウマチ科を受診しましょう。

参考文献

つか
医師・医学博士。
専門はリウマチ膠原病内科と血液内科です。
これまで大学病院や訪問診療で、関節リウマチと血液疾患の患者さんの診断・治療・自宅療養のサポートをして参りました。
リウマチと血液疾患で悩む患者さんに、笑顔と安心を届けることが私の使命と考えています。
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