【メトトレキサートが処方されたら】MTXの作用と副作用、気をつけるポイントについてリウマチ科医が解説

MTXは世界で最も使われている、関節の痛みや腫れをおさえ骨の破壊を止めてくれる、リウマチ治療の中心的な役割の薬です。MTXが使えるかどうかは、血液検査やレントゲンで確認します。MTXは少量から開始して、効果と副作用をみながら徐々に増やしていきます。MTXの副作用を予防するために、葉酸を必ず併用します。

先日リウマチと診断されて、メトトレキサートが始まりました。
どんな薬なのかな?

メトトレキサートはリウマチ治療で最も使われている薬ですよ。

メトトレキサート(MTX)は関節の痛みや腫れをおさえ、骨の破壊を止めてくれる、リウマチ治療の中心的な役割の薬です。

この記事を読めば、MTXの作用と副作用、用法や気をつけるポイントがわかると思います。

この記事のまとめ
  • MTXは世界で最も使われており、関節の痛みや腫れをおさえ、骨の破壊を止めてくれる、リウマチ治療の中心的な役割の薬です。
  • MTXが使えるかどうかは、血液検査やレントゲンで確認します。
  • MTXは少量から開始して、効果と副作用をみながら徐々に増やしていきます
  • MTXの副作用を予防するために、葉酸を必ず併用します。
目次

1. MTXはリウマチ治療の主役

メトトレキサート(Methotrexate:MTX)は免疫と炎症を抑える作用を持つ、世界で最も使われているリウマチの治療薬です。

関節の痛みや腫れをおさえ骨の破壊を止めてくれる、リウマチ治療の中心的な役割の薬です。

リウマチを治療する薬を戦隊ヒーローで例えるなら、MTXはリーダー的存在の赤レンジャーのイメージです。

2. MTXはどうやって効くの?

MTXは、細胞の増殖に必要な「葉酸」というビタミンの働きを妨げる作用があります。

この「葉酸」の働きを妨げる作用によって、関節の中で炎症を起こしている細胞や物質の働きが抑えられ、関節の炎症や破壊を止めます。

3. MTXはどんな時に使うの?

MTXは、リウマチと診断された時に最初に使われる薬です。

しかし、もともと肺の病気を合併していたり、腎臓や肝臓の機能が悪いとMTXを使用できないこともあります。MTXが使用できるかどうかは、事前に血液検査やレントゲン検査が必要です。

以下の場合はMTXが投与できないので、別のリウマチ薬(csDMARDs)で治療を始めます。

〜 MTXを投与できない人

  • 妊娠や授乳中
  • 肺の病気
    • レントゲンでわかる肺の病気(間質性肺炎や肺線維症など)
    • 在宅で酸素を使用中
  • 肝臓の障害
    • 急性のB型、C型肝炎
    • 肝硬変
    • AST/ALT 正常上限2倍以上
  • 腎臓の障害
    • eGFR<30 mL/min/1.73m2
      • 目安のクレアチニン値:男 >2.0 mg/dL、女 >1.5 mg/dL
    • 透析中
  • 胸水・腹水の貯留
  • 重大な感染症
    • 細菌感染、活動性結核や非定型抗酸菌症など
  • 血液の病気
    • 骨髄異形成症候群や再生不良性貧血、リンパ増殖性疾患など
  • 血液の異常
    • 白血球<3000/μL、血小板<5.0万/μL
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4. MTXの用法のポイント

MTXの内服方法は普通の薬とは少し違います。最初は戸惑うかもしれませんが、慣れれば難しくありません。

MTXの内服のポイント
  • 1週間に1日だけ内服します。
    • 週に1回内服するだけで効果は1週間持続します。
  • 1回 3錠(6mg)から開始します。
    • 高齢、腎機能低下、体の小さい場合 … 2錠(4mg)から開始
    • 若年、リウマチの炎症が強い場合 … 4錠(8mg)から開始
  • 効果が現れるのに2〜4週間かかります。
    • 1〜2週間飲んだだけで判断せず、1ヶ月程度は様子を見てみましょう。
  • 効果と副作用のバランスを見ながら、2〜4週おきに1〜2錠づつ増量していきます。
    • 5〜7錠(10〜14mg)まで増やすことが多い。
  • MTX最終内服の24〜48時間後に、葉酸を内服します。
    • 葉酸はMTXの副作用を予防してくれます。
  • MTX内服中は1〜3ヶ月ごとに、血液検査で副作用の確認が必要です。
    • 白血球などの血球、肝機能、腎機能、CRPなどの炎症反応をチェックします。
MTXと葉酸の内服スケジュール
引用元:https://www.ryumachi-jp.com/pdf/mtx_2020.pdf

MTXの皮下注射は吐き気が少なく、効果は高い!

  • 日本では2022年11月にMTXの皮下注射である、メトジェクト®︎が使用できるようになりました。
  • メトジェクト®︎の特徴は、内服薬に比べて吐き気の副作用が少ない点です。
  • MTXが10mg/週を超えてくると、皮下注射の方がカラダへの吸収が良く効果が高いと報告されています。
  • 薬の値段は月 3000円弱(3割負担)と内服薬に比べて少し高くなりますが、MTXを10mg/週以上内服していて吐き気が辛い人には良い適応です。

MTXだけでは痛みや腫れが治らないときはどうするの?

MTXを増やしても、痛みや腫れが残ってしまう方がいます。また、吐き気などの副作用で、MTXを十分に増やせないこともあります。

MTXだけでリウマチが良くなる人(寛解)は、約半数程度(2人に1人)と多くありません。そんな時は、他のリウマチ薬(生物学的製剤やJAK阻害薬、csDMARDsなど)を併用します。

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5. MTXの副作用

MTXの葉酸の働きをさまたげる作用は、関節以外のいろいろな細胞にも作用するため、それが副作用となります。

MTXの副作用は、大きく2つに分類されます。MTX開始後もしくは増量後に起こりやすい副作用(量依存性)とMTXの量に関係なく起こりうる副作用(量非依存性)があります。
中でもよく認められる副作用は口内炎、吐き気、肝機能の異常です。

MTXの副作用は葉酸(フォリアミン®︎)で予防・治療します。

  • 口内炎
  • 吐き気、下痢、腹痛
  • 肝機能の異常
  • だるさ、倦怠感
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6. 日常生活で気をつけること

リウマチの治療は基本的に一生続きます。MTXを長期間内服していく上で以下のことに気をつけ、リウマチと上手に付き合っていきましょう。

  • 禁煙しましょう
    • タバコはリウマチ悪化の原因になります。
    • 治療薬の効果を低下させたり、肺や血管の病気を進めたりすることで治療の大きな妨げになります。
  • お酒を飲み過ぎないようにしましょう
    • 肝臓に負担をかけ過ぎないように、アルコール摂取量を減らしましょう。
  • 適度な運動をしましょう
    • 関節に負担をかけない程度の運動は大切です。
    • 関節の痛みが強い場合は安静にしましょう。
  • こまめな水分補給を心がけましょう
    • 脱水になるとMTXの血液中の濃度が高くなり、副作用が強くなります
  • 葉酸のサプリメントは控えましょう
    • MTXの効果が弱くなってしまいます。
  • 定期的に通院しましょう。
    • リウマチが安定してても、投薬と血液検査は継続する必要があります。

7. Q&A:こんなときはどうすれば良い?

MTX内服中の方からよく受ける質問をまとめましたので参考にして下さい。ただ、患者さんの状況は個々で異なるため、最終的には主治医の先生と確認するのを忘れないでくださいね。

MTXを飲み忘れちゃいました。次の日に飲んでもいいですか?

飲み忘れてしまっても、次の日に飲めば問題ありません。その際はフォリアミン®︎を飲むタイミングもずらしましょう。
2〜3日忘れてしまった場合は、その週のMTXはスキップして構いません。1回飲み忘れただけではリウマチは悪くならないことが多いです。

風邪をひいちゃいました。MTXは続けていいの?

発熱、喉の痛み、咳などいつもの風邪の症状ならMTXを1〜2週間休薬して様子をみましょう。症状が軽快したら再開して構いません。

しかし、熱が下がらない喉の痛みを伴わない乾いた咳呼吸が苦しいなどいつもの風邪と違う場合は、間質性肺炎や細菌性肺炎の可能性があるため迷わず病院を受診しましょう。

MTXと飲み合わせの悪い薬はありますか?

基本的に、一緒に飲んではいけない薬はありません。しかし、注意して併用した方がよい薬があるため、医療機関を受診するときはお薬手帳を見せるようにしましょう。

ワクチンを接種しても良いですか?

生ワクチン以外の不活化ワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹など)やmRNAワクチン(コロナウイルス)なら受けても問題ありません。その際はリウマチ薬を休薬した方が良い場合もあるので、主治医の先生に確認しましょう。

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参考文献


最後まで読んでいただきありがとうございました!リウマチや血液の病気などの別の記事も参考にしていただけると幸いです。お疲れ様でした。

つか
医師・医学博士。
専門はリウマチ膠原病内科と血液内科です。
これまで大学病院や訪問診療で、関節リウマチと血液疾患の患者さんの診断・治療・自宅療養のサポートをして参りました。
リウマチと血液疾患で悩む患者さんに、笑顔と安心を届けることが私の使命と考えています。
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