訪問診療では、血圧や体温、酸素飽和度などの測定を行いますが、普段高血圧と診断されていない方でも、診察中に血圧が高めに表示されることがあります。多くの方が「診察中だけ血圧が高くなるんです」と感じることが少なくありません。
高血圧の現状と診断基準
日本では高血圧患者の推定数が約4,300万人に達し、成人の約3人に1人が高血圧に該当するとされています。特に中高年層で多く、加齢とともにその割合が増加します。
高血圧の診断基準は、家庭での血圧測定で収縮期血圧135mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上、または医療機関での血圧測定で140/90mmHg以上とされています。
白衣高血圧症とは?
白衣高血圧症とは、医療機関での血圧測定時に緊張することで、一時的に血圧が高くなる状態を指します。普段は正常な血圧でも、医療者が測定すると高くなることが多いのです。
この現象は特に高齢の女性に多く見られ、高血圧全体の15~30%が該当するとされています。
主な原因は、医療機関での緊張が交感神経を活発化させ、血圧を一時的に上昇させることです。診察後は通常の血圧に戻るため、正確な血圧を把握するためには家庭での測定が重要です。
仮面高血圧とは?
一方、病院での診察時には正常な血圧であっても、家庭で測ると高い場合は「仮面高血圧」と呼ばれます。仮面高血圧にはいくつかのタイプがあり、それぞれ異なる原因によって血圧が上昇します。
- 早朝高血圧:起床時に血圧が高くなる
- 夜間高血圧:睡眠中に血圧が高くなる
- ストレス性高血圧(職場高血圧):日中や職場でのストレスが原因
仮面高血圧は見過ごされがちなので、家庭での定期的な測定が必要です。
血圧の日内変動について
血圧は一日の中で変動します。一般的に、朝起床後に血圧が上昇し、日中にピークを迎え、夕方から夜にかけて低下します。たがって、一回だけの血圧測定ではなく、複数の時間帯で測定することが推奨されます。
血圧測定の注意点
血圧は、測定する部位や姿勢によっても異なります。手首で測る場合、腕を心臓の高さより高くしてしまうと血圧が低く、低い位置にすると高く測定されることがあります。特に手首で測るときは、血圧計が心臓の高さにくるように意識して測りましょう。
また、糖尿病や肝臓病、腎臓病、高血圧症などの病気がある方では、手首で測る血圧と上腕で測る血圧が大きく違うことがあります。これらの病気の方は、上腕での測定が正確ですので、できるだけ腕で測ることをお勧めします。
まとめ
白衣高血圧症や仮面高血圧は、日常生活の中で血圧管理をしっかり行うことが大切です。特に自宅での血圧測定を習慣化し、時間帯や状況に応じてこまめに測定することが、健康な血圧管理につながります。血圧が気になる方は、定期的に測定を行い、必要に応じて医師に相談しましょう。
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