
健診で赤血球の数が多いと言われました。
何も症状はないけど、病院に行った方がいいのかな?



赤血球が増える原因の多くは生活習慣によるものです。
一度は病院で調べてもらうことをオススメします。
血液検査で赤血球の数が多い状態を多血症(たけつしょう)といいます。
健康診断で発見されることが多い多血症について、血液内科医のつかポンが解説させていただきます。この記事を読めば、多血症の原因や対応が分かると思います。
- 多血症とは、赤血球の数が多く血液が濃くなっている状態を指します。
- 多血症の多くは自覚症状がありませんが、進行すると頭痛やめまい、赤ら顔、血栓症などを認めます。
- 多血症の原因の多くは、タバコによるストレス多血症です。
- まれに、血液の病気(真性多血症)が隠れていることがあるので、血液内科を受診しましょう。
1. 赤血球の役割


赤血球とは、中央にくぼみがある円盤型の赤い血球です。赤血球は、肺で酸素を受け取り、血液中を巡って全身に酸素を運ぶ役割があります。
赤血球の中にはヘモグロビン(血色素)と呼ばれるタンパク質があり、これに酸素が結びつくことによって酸素を運ぶことができます。わかりやすく言い換えると、赤血球は酸素というお客さんを乗せたタクシーの役割です。今の時代だとUber Eatsですね。
2. 多血症とは


多血症とは、血液中の赤血球の数が多い状態をいい、赤血球増加症とも呼ばれます。血液中の固形成分が増えるため、血液がドロドロと濃くなっているイメージです。
血液の濃さを示す指標には、ヘモグロビン(Hb)とヘマトクリット(Ht)の2つがあります。
多血症は、Hb>16.5 g/dl(男)、>16.0 g/dl(女)もしくはHt>49 %(男)、>48 %(女)のいずれかで診断されます。
ヘモグロビン(Hb) | ヘマトクリット(Ht) | |
---|---|---|
赤血球中の血色素量 | 血液中に占める赤血球の割合 | |
基準値 | 14.0 〜 16.5 g/dl | 36 〜 48 % |
男性 | >16.5 g/dl | >49 % |
女性 | >16.0 g/dl | >48 % |
3. 多血症の症状
多血症の多くは自覚症状がなく、健康診断や他の病気の検査中に偶然に発見されることががほとんどです。赤血球の数が著しく増えると、以下の症状を認めます。
多血症で注意しなければいけない症状に、血管の中で血の塊を作る「血栓症」があります。赤血球が増え血液がドロドロと濃くなるため、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症を起こすことがあります。
- 頭痛


- 耳鳴り


- めまい


- 赤ら顔


- 高血圧
- 血栓症
- 脳梗塞、心筋梗塞など


4. 多血症の原因と治療
多血症の原因は、大きく分けると ①ストレス多血症 ② 二次性多血症 ③ 真性多血症があります。
4-1. ストレス多血症






- 概要
- ストレス多血症とは、タバコ、飲酒、肥満、高血圧症、高尿酸血症、脂質異常症などの生活習慣による多血症をいいます。ストレス多血症は多血症の中で最も多く、その原因のほとんどは喫煙です。
- 対応
- 生活習慣を見直す
- ストレス多血症は「今の生活習慣を続けていると、いずれカラダに血栓症などの異変が起こるかもしれないよ」というカラダからのSOSです。
- 禁煙、食事内容やアルコール摂取量の見直し、体重管理を行うと赤血球の数は自然と改善します。
- 血栓を予防するために、こまめな水分摂取を心がけましょう。
- 生活習慣を見直す
4-2. 二次性多血症(二次性赤血球増加症)
- 概要
- 二次性多血症とは、他の病気が原因で赤血球が過剰に作られてしまう多血症をいいます。二次性多血症の原因には以下のとおりです。
- 慢性的な肺の病気
- タバコによるCOPDや睡眠時無呼吸症候群など


- 生まれつきの心臓の病気
- 慢性的に酸素不足になる病気(チアノーゼ伴う心疾患など)


- エリスロポエチン産生性腫瘍
- エリスロポエチンという赤血球を増やすホルモンを産生する腫瘍
- 腎細胞癌、肝細胞癌、小脳血管腫などの腫瘍に多くみられる


- 対応
- 二次性多血症の原因となっている病気を治療すると、赤血球の数は自然と改善します。原因となっている病気の治療が難しければ、瀉血(しゃけつ)や内服薬で治療します。
4-3. 真性多血症
- 概要
- 血球の赤ちゃんである造血幹細胞の遺伝子に異常がおこり、血球がどんどん作られる病気を骨髄増殖性腫瘍(Myeloproliferative Neoplasms:MPN)といいます。真性多血症(Polycythemia Vera:PV)はMPNのひとつで、主に赤血球が増え続ける病気です。
- 真性多血症では多血症の症状に加え、肝脾腫によるお腹の張りや食欲低下、皮膚のかゆみ、消化性潰瘍を認めます。
- 対応
- 瀉血、抗血小板療法、細胞減少療法によって、血栓症の予防を行います。
5. 多血症の原因の見分け方【血液内科医の視点】
多血症の診断と治療は、血液の専門家である血液内科で行います。どのように診断しているのか、簡単に説明します。


まず最初に、持続的に赤血球の数が多いのかを血液検査で再確認します。
再検査で赤血球の数が正常に戻っていたら、脱水などの一時的な原因の可能性が高いので、詳しく調べる必要はないでしょう。
以下の血液検査所見は、真性多血症の可能性が高いので注意が必要です。
- Ht>60 %(男)、>55 %(女)
- 鉄欠乏状態(MCV<80 fL、フェリチン低値)
- 赤血球がたくさん作られるため、赤血球の材料である鉄が不足する
- 汎血球増加
- 白血球や血小板も増加している
- VitB12高値(>900 pg/mL)
- NAPスコア高値(>100以上)


タバコを吸っているかを確認します。
喫煙者の多血症では、98%が喫煙によるストレス多血症と報告されています。一方で、非喫煙者の多血症では、真性多血症の頻度は33%程度といわれています。


お腹に超音波を当てて、脾臓が腫れていないか確認します。


血液検査から真性多血症を疑う場合、もしくは禁煙などの生活習慣を見直しても赤血球の数が下がらない場合は、血液検査で遺伝子検査(JAK2遺伝子の変異)を行います。
JAK2遺伝子の変異があれば、診断は真性多血症でほぼ間違いないでしょう。
参考文献:1)がんと希少な病気の情報サイト、2)岡田 定. 時間軸で捉える血算 〜線で捉える
最後まで読んでいただきありがとうございました!血液の病気についても解説しているので別の記事も参考にしていただけると幸いです。