
父が骨髄異形成症候群と診断されました。
今は元気そうだけど、これからどうなるか心配です。



そうでしたか。
あまり聞きなれない病気なので、不安が大きいですよね。
健診や血液検査の異常から診断されることが多い骨髄異形成症候群ですが、日本の高齢化が進む中で患者さんの数は徐々に増えています。ただ、他の病気と比べると患者数は少ないので、診断された時に初めて病名を知る方も少なくありません。
この記事を読めば、MDSの病気についての診断から治療、そして日常生活で気をつけるポイントがわかると思います。
- 骨髄異形成症候群(MDS)は、血液細胞の赤ちゃんである造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり、正常な血液細胞がつくられなくなる病気です。
- MDSの多くは自覚症状がありませんが、病気が進行すると血球減少による貧血・感染症・出血などの症状がみられます。
- MDSの診断は、血液検査や骨髄検査で行います。
- MDSの治療法は、支持療法、化学療法、造血幹細胞移植の3本柱からなります。
1. 骨髄異形成症候群ってどんな病気?


骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndrome:MDS)は、赤血球、白血球、血小板などの血液細胞のもとになる造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり、正常な血液細胞がつくられなくなる病気です。
MDSには、以下の特徴があります。MDSは単一の病気ではなく様々な種類があり、同じ病気でも進行の速度や特徴が患者さんによって変わります。
- 高齢の男性に多い
- 発症年齢の中央値 65歳
- 男:女=2:1
- 比較的まれな病気
- 日本の患者数 10万人あたり約3人
- 血液細胞(血球)が少なくなる
- 貧血、白血球減少、血小板減少
- 無効造血や異形成を認める
- 血球の形や機能が正常でないため、壊れてしまう
- 急性骨髄性白血病へ移行
- 未熟で役に立たない血液細胞(芽球)が増え、約1/3の症例が白血病に進む


- 血液の中に存在する赤血球、白血球、血小板などを血液細胞といいます。
- 血液細胞は、骨の中心部にある骨髄で、血液細胞のもとになる造血幹細胞から増殖・分化してつくられます。
- 造血幹細胞は、骨髄球系幹細胞とリンパ球系幹細胞に分かれて成長します。
- 骨髄系幹細胞からは、赤血球、白血球(顆粒球)、血小板が作られます。
- リンパ系幹細胞からは、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)が作られます。
2. 【症状】血球減少による貧血、発熱、出血
MDSの初期は自覚症状がなく、健康診断や他の病気の検査中に偶然に発見されることがほとんどです。
病気が進行すると、血球減少による感染症・貧血・出血などの症状がみられます。
- 白血球減少
- 感染症にかかりやすくなり、発熱などの感染症状


- 赤血球減少
- 貧血による疲れやすさや息切れ、動悸、眠気、頭痛など


- 血小板減少
- 出血しやすくなり、皮膚の青あざや出血がおきる


3. 【原因】遺伝子の異常


加齢や抗がん剤、放射線治療などの原因によって、血液をつくる細胞に遺伝子の異常が生じ、これが発症に関与すると考えられています。
4. 【診断】血液検査と骨髄検査で診断


MDSの診断は、血液検査と骨髄検査で行います。
血液検査では、血球減少と形態異常の有無を確認します。
骨髄検査では、顕微鏡で形態異常の有無と芽球の割合などを調べます。さらに染色体検査、遺伝子検査などの結果を総合して診断を確定します。
また、血液や骨髄中の芽球の割合が20%を超えると、急性白血病と診断されます。
骨髄検査とは?


- 骨髄検査とは、腰の骨に針を刺し、骨の中にある骨髄をとる検査です。
- 骨髄検査には、骨髄穿刺(せんし)と骨髄生検(せいけん)の2種類があります。
- 骨髄穿刺 … 骨髄の中の液体(骨髄液)をとる検査です。細胞の数や形、遺伝子検査や染色体検査などを行います。
- 骨髄生検 … 骨髄そのもの(骨髄組織)をとる検査です。骨髄をそのままの状態で観察できるので、細胞の密度や線維化などがわかります。
- 検査の際は局所麻酔で痛みを和らげますが、骨髄液を抜き取るときに特有の痛みがあります。
- 検査時間は10~20分程で終わり、検査後に30分間仰向けで安静にします。穿刺部位の血が止まったのを確認できれば、帰宅できます。
- 検査後は出血しやすいので、運動や入浴、アルコール摂取は控えましょう。
5. 【予後予測】治療方針を決めるために重要
予後とは、「今後の病状についての医学的な見通し」のことです。MDSの予後は、病気の進行や急性骨髄性白血病への移行を意味します。
MDSの予後に影響を与える因子(予後因子)を点数化し、その合計点数によってリスク分類することで予後を予測することができます。
予後予測は、現在の病状を知り、今後の治療方針を決定するために非常に大切な情報となります。主に使われている予後予測システムには、IPSS-R(Revised IPSS : 改訂IPSS)があります。
- 予後因子の点数化
- 血液検査や骨髄検査の結果を点数化します。


- リスク分類
- 5つのリスク群に分類されます。


- IPSS-Rによる予後予測
- 生存期間中央値 … その集団において、半分の患者さんが亡くなるまでの期間
- 25%白血病移行期間 … その集団において、1/4の患者さんが白血病に移行するまでの期間
生存期間中央値 | 25%白血病移行期間 | |
---|---|---|
Very Low | 8.8年 | – |
Low | 5.3年 | 10.8年 |
Intermediate | 3年 | 3.2年 |
High | 1.6年 | 1.4年 |
Very High | 0.8年 | 0.73年 |
6. 【治療】支持療法、化学療法、造血幹細胞移植の3本柱
MDSの治療法は、①支持療法 ②化学療法 ③造血幹細胞移植の3つに分けられます。
MDSのリスクと年齢や合併症などの患者さんの状態から、ご本人様の希望に応じて、治療法を決めていきます。
- 支持療法
- 化学療法
- 造血幹細胞移植
6-1. 支持療法


支持療法とは、MDSによる症状を和らげたり、治療による副作用や合併症を予防・治療することです。
また、不足した血液細胞を輸血で補ったり、感染症に対する抗菌薬の投与などがこれに当たります。
- 輸血
- 貧血(Hb < 7.0 g/dl)に対する赤血球輸血
- 血小板減少(PLT < 1.0万 /μL)に対する血小板輸血
- 造血刺激因子製剤
- 貧血に対するエリスロポエチン製剤
- 好中球減少に対するG-CSF製剤
- 抗菌薬
- 感染症の予防と治療
- 鉄のキレート療法
- 赤血球輸血で体内にたまった鉄を取り除く
白血球は輸血できない!


- 白血球は、カラダを守る免疫の役割をもつ血液の細胞です。もし、他人の白血球を患者さんに輸血してしまうと、アレルギー反応(GVHD:Graft Versus Host Disease:移植片対宿主病)を起こしてしまいます。
- 白血球にはウイルスなどが感染していることもあり、他人の白血球を輸血することで感染症を起こす可能性があります。
- そのため、赤血球液製剤や濃厚血小板製剤では、製剤に混じっている白血球が増えないように放射線を照射しています。
6-2. 化学療法


化学療法とは、抗がん剤による治療法です。化学療法の目的は造血を回復したり、芽球を減らし、白血病への移行を遅らせることを目的に行います。
使用する抗がん剤の種類や投与量は、患者さんの年齢や全身の状態などを考慮して決められます。
- アザシチジン(ビダーザ®︎)
- CAG療法
- IDR + Ara-c療法
6-3. 造血幹細胞移植


造血幹細胞移植とは、患者さんと健康なドナーさんの造血幹細胞を入れ替え、造血機能を回復させる治療法です。
強力な化学療法や全身への放射線照射を行い、患者さんの造血幹細胞などの血液細胞を壊した後、正常な造血幹細胞を移植します。MDSで治癒が期待できる唯一の治療法です。
移植を行うためには、年齢や全身の状態、ドナーの有無などの条件を満たす必要があります。
7. 【治療の選び方】低リスクと高リスクで異なる治療法
MDSの治療法の中でどの治療を選択するかは、その患者さんのMDSの予後によって決まります。主にIPSS-Rによって予後を予測します。
- 低リスク … IPSS-R:Very Low、Low
- 高リスク … IPSS-R:High、Very High
7-1. 低リスク
- 経過観察
- 支持療法
- 免疫抑制療法
低リスクでは、白血病移行のリスクが低く予後が比較的良好なため、基本的には化学療法や同種造血幹細胞は行いません。
血球減少が軽度で、症状がない場合は、無治療で経過を見ていきます。
血球減少が進行したり、症状の程度によって、支持療法を行います。
骨髄が低形成もしくはPNH(Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria)血球が陽性の場合は、免疫抑制療法(シクロスポリンや抗胸腺グロブリン抗体)を行うこともあります。
また、5q-症候群(5番目の染色体の一部欠失)という病型の患者さんには、レブラミドという薬剤による治療を考慮します。
7-2. 高リスク
- 同種造血幹細胞移植
- 化学療法
高リスクでは、白血病への移行のリスクが高く予後が不良なため、年齢や合併症などを考慮して同種造血幹細胞移植で完治を目指します。
同種造血幹細胞移植を希望されない、または年齢や持病のために実施できない場合は化学療法(アザシチジン療法:ビダーザ®︎)を検討します。アザシチジン療法は、血球減少が改善したり、白血病への進行を遅らせる効果があります。
8. 日常生活で気をつけること
MDSと診断されたら、長期にわたり、経過観察や治療が必要になります。
以下の点に注意して、病気と上手に付き合っていきましょう。
- バランスのいい食生活を心がけましょう
- タンパク質や鉄分、ビタミンは血液細胞の材料になります。


- 感染を予防しましょう。
- MDSは白血球がうまく働かず、感染しやすい状況です。
- 手洗い、うがい、マスクを徹底しましょう。


- 定期的に病院に通院しましょう。
- 自覚症状だけでは病状はわからないので、血液検査のチェックが必要です。


- 発熱、息切れ、出血症状に注意しましょう。
- 血球減少による症状は病状の進行が疑われます。


最後までお読みいたただき、ありがとうございました。