
白血球の数が多いから病院で調べてもらったら、慢性骨髄性白血病かもしれないといわれました。



白血病と聞くと、心配になりますよね。
でも、今はよく効く薬があるので、安心してください。
健康診断や血液検査で偶然、白血球が多いと指摘されることがあります。多くは治療の必要のない白血球増加ですが、中には血液の病気である慢性骨髄性白血病(Chronic Myelogenous Leukemia:CML)と診断されることがあります。
- CMLは、造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり、血球(特に白血球)が必要以上に作られる、血液の病気です。
- CML発症の原因は、「フィラデルフィア染色体」と呼ばれる染色体の異常です。
- CMLの診断は、血液検査と骨髄検査で行います。
- CML慢性期の治療は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)という分子標的薬を内服します。
1. CMLってどんな病気?


慢性骨髄性白血病(CML)は、血球の赤ちゃんである造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり発症します。その結果、成熟した大人の血球(特に白血球)が必要以上に作られます。この状態を慢性期といいます。
さらに放置すると、細胞の成長が止まり、未熟で役に立たない血球(芽球)が増加する急性期に移行します。急性期に移行したCMLは、予後が極めて不良です。
- 稀な病気
- 日本で1年間に10万人あたり約1~2人発症
- 日本の患者数は約8000人
- 中高年の方に多い
- 年齢の中央値は55歳
- やや男性に多い
2. 【症状】ほとんどが無症状
多くの方は症状がなく、健康診断や他の病気の検査中に偶然に発見されることがほとんどです。
病気が進行し、急性期になると、正常な血液細胞がつくられなくなります。そのため、貧血(息切れや動悸)・感染症(発熱など)・出血など急性白血病と同じ症状がみられます。また、脾臓が大きくなるため、おなかに張りを感じることもあります。
- 白血球減少
- 感染症にかかりやすくなり、発熱などの感染症状


- 赤血球減少
- 貧血による疲れやすさや息切れ、動悸、眠気、頭痛など


- 血小板減少
- 出血しやすくなり、皮膚の青あざや出血がおきる


3. 【原因】遺伝子の異常


CMLの発症の原因は、細胞の中にある染色体の異常です。「フィラデルフィア染色体」と呼ばれる、9番目の染色体と22番目の染色体が切断・入れ替わることが原因で起こります。
フィラデルフィア染色体からは異常な遺伝子(BCR-ABL融合遺伝子)が作られます。ここからつくられるタンパク質が白血病細胞を増殖させ、CMLが発症します。
慢性骨髄性白血病は遺伝するの?


遺伝子の異常と聞くと子供に影響がないか、心配になりますよね。慢性骨髄性白血病は遺伝性の病気ではないので、子供には遺伝しません。
4. 【診断】血液検査と骨髄検査で診断
CMLの診断は、血液検査と骨髄検査で行います。診断には専門的な知識が必要なので、血液内科で精査します。
4-1. 血液検査


喫煙や炎症、感染症などの白血球増加の原因がないのに、白血球数が増加している場合は慢性骨髄性白血病を疑います。
血液検査では以下の項目がないか、確認します。
- 白血球増加
- 白血球分画の異常
- 好塩基球増加、幼弱顆粒球出現
- 貧血
- 血小板増加
- VitB12低値
- NAP score低値
- 好中球のBCR-ABL1の転座(FISH法)
4-2. 骨髄検査


次に骨髄検査を行って、慢性骨髄性白血病に特徴的なフィラデルフィア染色体が見つかれば、診断が確定します。
また、芽球の比率によって病期(慢性期、移行期、急性期)が決まります。
骨髄検査とは?


- 骨髄検査とは、腰の骨に針を刺し、骨の中にある骨髄をとる検査です。
- 骨髄検査には、骨髄穿刺(せんし)と骨髄生検(せいけん)の2種類があります。
- 骨髄穿刺 … 骨髄の中の液体(骨髄液)をとる検査です。細胞の数や形、遺伝子検査や染色体検査などを行います。
- 骨髄生検 … 骨髄そのもの(骨髄組織)をとる検査です。骨髄をそのままの状態で観察できるので、細胞の密度や線維化などがわかります。
- 検査の際は局所麻酔で痛みを和らげますが、骨髄液を抜き取るときに特有の痛みがあります。
- 検査時間は10~20分程で終わり、検査後に30分間仰向けで安静にします。穿刺部位の血が止まったのを確認できれば、帰宅できます。
- 検査後は出血しやすいので、運動や入浴、アルコール摂取は控えましょう。
5. 【治療】チロシンキナーゼ阻害薬
CMLを治すことは難しいですが、長期にわたって病気をコントロールすることは可能です。
治療内容は慢性期と急性期で異なります。
5-1. 慢性期
① 治療薬:チロシンキナーゼ阻害薬


慢性期の治療は、チロシンキナーゼ阻害薬(Tyrosine Kinase Inhibitor:TKI)という分子標的薬を内服します。CMLのフィラデルフィア染色体によるチロシンキナーゼの働きを阻害し、増え続ける白血病細胞の増殖を抑えます。
治療しなければ、約4~5年で進行期に移行するため、慢性期に診断しTKIを開始することが重要です。
TKIの効果は非常に高いので、90%以上の人が急性期に移行せずに日常生活を送っています。
チロシンキナーゼ阻害薬には6種類の薬があり、それぞれに特徴があります。患者さんの状態や病気の状態にあわせて、薬剤を選びます。
- 第1世代
- イマニチブ(グリベック®︎)
- 第2世代
- ダサチニブ(スプリセル®︎)
- ニロチニブ(タシグナ®︎)
- ボスチニブ(ボシュリフ®︎)
- 第3世代
- ポナチニブ(アイクルシグ®︎)
- 新しい薬(STAMP阻害薬)
- アシミニブ(セムブリックス®︎)
あわせて読みたい 【CMLでのチロシンキナーゼ阻害薬の選び方】
② 治療目標
治療目標 | 治療後3カ月 | 治療後6カ月 | 治療後12カ月以降 |
---|---|---|---|
BCR-ABL1IS 定量 | ≦ 10 % | < 1 % | ≦ 0.1 % |
CMLの治療が順調に進んでいるかどうかは、通常の血液検査の項目だけでは判断できません。そのため、血液検査でBCR-ABL融合遺伝子の量(BCR-ABL1IS 定量)を確認します。
上記の目標が達成できているかどうか、最初の2年間は3ヶ月毎、それ以降は3〜6ヶ月毎のモニタリングが推奨されています。治療目標が達成されない場合は、ABL1の点突然変異の確認や別のTKIへの変更を検討します。
TKIは一生飲まないといけないの?


CMLを根本的に治すことは難しいので、基本的にはTKIを一生飲み続ける必要があります。
しかし最近の研究では、CMLの状態がTKIによって長期間安定している患者さんの一部はTKIを中止してもCMLが悪くならないことが分かってきました。これをTKI Free Remission:TFRといいます。
TFRを目標に治療するかどうかは、主治医の先生とよく相談する必要があります。決して自己判断で中止しないでください。
あわせて読みたい TKI Free:TFRについて
5-2. 急性期


芽球が増えている急性期は、チロシンキナーゼ阻害薬だけでは効果が不十分なため、抗がん剤による治療(化学療法)や造血幹細胞移植を検討します。
6. 日常生活で気をつけること
CMLの予後は、TKIの登場によって、劇的に改善しました。多くの人がTKIを継続して内服することで、健康な人と同じように日常生活が送れます。
以下の点に気をつけ、CMLとうまく付き合いながら日常生活を送りましょう。
- 処方された内服薬はしっかり飲みましょう。
- 不適切な内服は薬剤耐性の原因となります。


- バランスの良い食事をとりましょう。
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症は心血管イベントのリスクを上げます。


- 適度に運動をしましょう。
- 生活習慣病を予防します。


- タバコはやめましょう。
- 喫煙は心血管イベントのリスクを上げます。

