
若いときから健康診断で貧血と言われています。
そのままにしているけど大丈夫かしら。



血液検査で貧血と言われたことのある女性は多いと思います。
一度は病院で原因を調べてもらうと安心ですね。
日本の成人女性の貧血の頻度は約30%と報告されており、3人に1人は貧血ということになります。貧血の多くは月経に伴う貧血ですが、なかには重大な病気が隠れていることもあるので注意が必要です。
- 貧血とは、カラダに酸素を運ぶヘモグロビンが少ない状態のことです。
- 貧血の症状は、息切れや疲れやすさなどのカラダの酸欠状態によるものです。
- 貧血の原因は、「赤血球を作る/壊れる」のバランスが崩れることです。
- 貧血を指摘されたら、放置せずに一度は病院を受診しましょう。
1. 赤血球は酸素を運ぶ


赤血球とは、中央にくぼみがある円盤型の赤い血球です。赤血球は、肺で酸素を受け取り、血液中を巡って全身に酸素を運ぶ役割があります。
赤血球の中にはヘモグロビン(血色素)と呼ばれるタンパク質があり、これに酸素が結びつくことによって酸素を運ぶことができます。わかりやすく言い換えると、赤血球は酸素というお客さんを乗せたタクシーの役割です。今の時代だとUber Eatsですね。
2. 貧血の定義


貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンが少ない状態をいいます。ヘモグロビンはカラダに酸素を運ぶ役割があるので、ヘモグロビンが少ないとカラダが酸欠状態となります。そのため、貧血になるとさまざまな不調があらわれるようになります。
貧血の診断は血液検査で行います。WHO(世界保健機関)の定義では、血液中のヘモグロビン値が男性で13.0g/dl以下、女性で12.0g/dl以下のことをいいます。
ヘモグロビン値 | 男性 | 女性 |
正常 | 14~18 g/dl | 12~16 g/dl |
貧血 | < 13 g/dl | < 12 g/dl |
3. 貧血の症状


貧血の症状は、カラダの臓器や筋肉が酸欠になることによって起こります。
ただし、軽度の貧血ではほとんど症状はありません。また、貧血がゆっくり進行した場合には、慢性的な貧血状態に体が慣れるため、自覚症状が出ないこともあり、月経による貧血に慣れている女性によく見られます。
中には、治療を受け貧血が改善すると「カラダが軽くなった」「頭痛がなくなりました」と治療後に初めて貧血の症状を自覚するケースも珍しくありません。
貧血を治療せずに放置していると、これらの症状が悪化し、ついには心臓がつかれてしまう心不全という状態になります。心臓は全身に血液を送るポンプの役割があります。ポンプが故障してしまうと生命に危険が及ぶ状態になります。
- 自覚症状
- 動悸、息切れ、疲れやすさ、眠気、頭痛、めまい、食欲不振など


- 特有な自覚症状
- 鉄欠乏性貧血
- スプーンの様に真ん中が凹んだ爪、飲み込みづらさ、舌の痛み、味覚障害、口角炎、氷をかじる
- 巨赤芽球性貧血
- 味覚障害、舌の痛み、手足のしびれや痛み、筋力低下、認知症や錯乱、年齢不相応の白髪
- 鉄欠乏性貧血
- 他覚症状
- 眼瞼結膜貧血 … 下まぶたの粘膜が白い(まぶたの縁の色が奥の色と同じ)
- 皮膚蒼白 … 顔や手の平が青白い


立ちくらみは貧血ではない?


立ち上がった時に眼の前が黒くなる、朝の満員電車で気分が悪くなって倒れてしまったなどの状態を「貧血」ということがあります。実はこれは貧血ではなく、起立性低血圧や神経調整性失神と言われるものです。血圧が一時的に低下することで起こる症状なので、血液検査をしても貧血は認められません。
4. 貧血の原因
貧血は、「赤血球の作る/壊れる」のバランスが崩れることによって起きます。
貧血の原因は、①うまく作れない ②失われる、壊される ③生まれつき の3つに分けられます。
- 赤血球がうまく作れない
- 鉄欠乏性貧血
- 巨赤芽球性貧血
- 腎性貧血
- 二次性貧血
- 血液疾患
- 赤血球が失われる、壊される
- 出血
- 溶血性貧血
- 生まれつき
- 球状赤血球症
- サラセミア
4-1. 赤血球がうまく作れない


赤血球は骨髄という骨の中にある組織で、色々な材料と造血ホルモンから作られています。このいずれかに問題が生じると赤血球がうまく作れないため貧血になります。料理で例えると、食材(材料)やスパイス(造血ホルモン)が足りなかったり、厨房(骨髄)がボロボロだと美味しい料理は作れません。
- 赤血球の材料
- タンパク質や鉄、ビタミンB12、葉酸
- 赤血球のスパイス
- エリスロポエチン(腎臓で作られる造血ホルモン)
- 赤血球の厨房
- 骨髄
赤血球がうまく作れない貧血の原因には、鉄が足りない「鉄欠乏性貧血」やビタミンB12、葉酸が足りない「巨赤芽球性貧血」、エリスロポエチンが足りない「腎性貧血」、骨髄でうまく血液が作れない「血液疾患」、膠原病などの炎症性疾患やがんの影響でうまく赤血球が作れない「二次性貧血」などがあります。


腎性貧血 リンク
鉄欠乏性貧血 リンク
4-2. 赤血球が失われる、壊される




赤血球は骨髄という骨の中にある組織で作られ、カラダの中で働きます。約120日間働いて老化した赤血球は脾臓で壊されます。壊された赤血球の材料の多くは新しい赤血球に再利用されます。このように赤血球の循環のサイクルは、本来一定に保たれています。
何らかの原因で赤血球が失われたり壊されたりすると、赤血球の循環のサイクルが乱れ、貧血になります。赤血球が失われる原因は「出血」、壊される原因は「溶血」などがあります。
4-3. 生まれつき(遺伝性)


生まれつき遺伝子に異常があるため貧血となる場合もあります。患者さんの多くは出生時に診断がつきますが、まれに大人になってから発見されることもあります。遺伝性貧血には、「遺伝性球状赤血球症」や「サラセミア」などがあります。
入院すると貧血になる?


- 「外来より入院時の検査結果の方がヘモグロビンが低い」と思ったことはありませんか?
- その理由は、採血時の体位が異なるからです。
- 入院時の採血は病室のベッドで横になって行うことが多いため、座っている状態と比べ血管内の血漿の量が増えています。すると相対的に赤血球の量は減るため、ヘモグロビンは低値となります。
- これを体位性偽性貧血と言います。
5. 貧血は何科を受診すればよい?


健康診断などの血液検査で貧血を指摘されたり、動悸や息切れ、疲れやすさなどの貧血の症状を感じたときに何科を受診すればいいのかわからないという声をよく聞きます。
貧血には色々な原因がありますが、そのほとんどが鉄が足りなくて赤血球をうまく作れない「鉄欠乏性貧血」です。まずは一般内科の受診で問題ありません。
内科で調べた結果、専門の科の受診が必要と判断された場合には、一般内科から専門の科に紹介されるので心配いりません。もし、下記の症状があるなら、最初から専門科への受診が勧められます。
- 月経の量が多い
- 子宮筋腫や子宮内膜症などの可能性 → 婦人科


- 便が黒い、便に血がまじる
- 胃や腸などからの出血の可能性 → 消化器内科


- 血尿が出ている
- 腎臓や膀胱などから出血の可能性 → 泌尿器科


また消化器、腎臓、肝臓、膠原病など他の内科疾患で治療中の方は、そちらの主治医に相談してみるといいでしょう。
6. 貧血の原因の調べ方


このように貧血の原因となる病気はたくさんあります。原因によって治療法が異なるため、原因を調べることは重要です。
まずは病院で問診と血液検査を行います。さらに詳しく調べる必要がある場合は、各専門科で精密検査を行います。
それでも診断がつかない場合は、貧血の専門家である血液内科で骨髄検査などが検討されます。
6-1. 問診


問診は、貧血の原因を推測する上で大切な情報となります。
以下の項目を確認します。
過去、現在の病気 | |
子宮筋腫や子宮内膜症 | 鉄欠乏性貧血 |
膠原病などの炎症性疾患 がん | 二次性貧血 |
慢性腎臓病 | 腎性貧血 |
胃切除 | 巨赤芽球性貧血 |
薬剤 | |
NSAIDsやPSLの長期内服 | 出血性貧血 |
MTXや抗がん剤など | 薬剤性貧血 |
食事や飲酒 | |
ベジタリアン、ヴィーガン | 巨赤芽球性貧血 鉄欠乏性貧血 |
長期間、多量のお酒 | 巨赤芽球性貧血 |
便や尿 | |
便に血が混じる 肛門から血が出る | 出血性貧血 (下部消化管) |
便が黒い | 出血性貧血 (上部消化管) |
コーラ色の尿 | 溶血性貧血 |
月経 | |
ナプキンが1時間もたない 血のかたまりが出る 出血が1週間以上続く | 鉄欠乏性貧血 |
家族の病気 | |
血縁の家族に貧血 黄疸、胆石、脾臓摘出 | 遺伝性貧血 |
① 現在や過去の病気


現在治療中の病気が貧血の原因となっている可能性があります。
例えば、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科系の疾患は月経の量が多くなる場合があります。月経の量が増えれば、鉄が失われるため鉄欠乏性貧血になります。
また、膠原病などの炎症性疾患やがんで治療中の場合は、炎症によりうまく赤血球が作れない二次性貧血を合併する場合があります。
腎臓の機能が低下する慢性腎臓病では、造血ホルモンであるエリスロポエチンが作れないため、腎性貧血となります。
また、過去の病気が貧血の原因となっているケースもあります。
過去に胃潰瘍や胃がんなどで胃を切除していると、鉄やビタミンB12の吸収ができず、鉄欠乏性貧血や巨赤芽球性貧血になる場合があります。
② 薬剤


薬剤によって貧血となる場合があるため、現在使用している薬剤を確認することは大切です。
ロキソニン®などのNSAIDsやプレドニン®などの副腎ステロイドを長期間内服していると、胃の粘膜が荒れる場合があります。その場合は腹部の違和感や痛みを自覚する場合が多いです。胃や十二指腸などの消化性潰瘍が疑われる場合は、消化器内科で精査したほうが良いでしょう。
また、メトトレキサートや抗がん剤などの薬は、薬の副作用によって貧血になる場合があります。主治医の先生に確認してみましょう。
③ 食事や飲酒


食事の内容によっては、貧血になることがあります。
ベジタリアンやヴィーガンでは動物性食品に豊富に含まれる鉄やビタミンB12が不足しやすくなり、鉄欠乏性貧血や巨赤芽球性貧血になる可能性があります。可能ならバランスのよい食事を心がけたり、サプリメントを活用すると良いでしょう。
また長期間、多量のお酒を摂取すると葉酸の吸収が抑えられ、葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血になる場合があります。飲酒はほどほどにしましょう。
④ 便や尿


便や尿の色から貧血の原因を推測することが可能です。
便に血が混じっている、肛門から血が出るなどは腸や痔からの出血性貧血を疑います。
また、便が黒い場合は胃や十二指腸からの出血性貧血を疑います。胃や十二指腸から出血すると、血液が胃の中にたまります。血液に含まれるヘモグロビンの鉄分が胃酸によって酸化され、黒く変色します。
胃や腸からの出血の原因は消化性潰瘍やがんの可能性もあるため、消化器内科で精査しましょう。
また、尿がコーラ色(茶色、褐色)に変色している場合、溶血性貧血が疑われます。赤血球が溶血すると、壊れたヘモグロビンが尿中に排出されコーラ色に変色します。
便が黒くなる原因
食べ物や飲み物、内服薬によって、便が黒くなるケースがあります。よくあるケースとしては鉄剤
- 食べ物
- イカ墨
- 海苔
- 食用炭
- ひじき
- 赤ワイン、ぶどうジュース
- 色が黒い食べ物やポリフェノールは便を黒くする場合があります。
- 薬剤
- 鉄剤
- 薬用炭
⑤ 月経
ナプキンが1時間もたない、レバーのような血のかたまりがたくさん出る、出血が1週間以上続くなど … 鉄欠乏性貧血
⑥ 家族の病気
血縁の家族に貧血、黄疸、胆石、脾臓摘出 … 遺伝性貧血
6-2. 血液検査


血液検査では貧血の詳しい情報を確認します。貧血で重要となる検査項目は、下記の通りです。
- MCV
- 赤血球1個あたりの平均的な大きさ
- 網赤血球
- 成熟赤血球になる1段階前の幼若な赤血球
- 骨髄での赤血球造血能を反映
- フェリチン
- カラダに貯蔵されている鉄の量を反映
- LDH、ハプトグロビン
- 溶血や無効造血を反映
- ビタミンB12、葉酸
- 赤血球の材料
- エリスロポエチン
- 腎臓から作られる造血ホルモン
- FT3、FT4
- 甲状腺ホルモン
これらの検査項目の中で、貧血の原因を見極めるために重要な項目は、MCVと網赤血球数です。
この2つの検査項目の見方について簡単に説明します。
① MCV
小球性 MCV<80 fl | 正球性 80<MCV<100 fl | 大球性 MCV>100 fl |
鉄欠乏性貧血 二次性貧血 サラセミア | 急性出血 溶血性貧血 二次性貧血 腎性貧血 骨髄異形成症候群 再生不良性貧血 赤芽球ろう 白血病 多発性骨髄腫 | 巨赤芽球性貧血 骨髄異形成症候群 肝硬変 甲状腺機能低下症 溶血性貧血 アルコール多飲 白血病 |
MCVとは平均赤血球容積のことで、赤血球1個あたりの平均的な大きさを表す指標です。MCVは赤血球数とヘモグロビン、ヘマトクリットの検査データから算出され、どの種類の貧血であるかを推測するのに役立ちます。
- MCVが小さい時(<80 fl)はまず鉄欠乏性貧血を考える
- フェリチン < 12 ng/ml の場合は、鉄欠乏性貧血で診断確定
- フェリチン高値の場合は、二次性貧血を考える
- MCV < 75 fl と極端に小さく、赤血球数が多いときは、サラセミアを考える
- MCVが大きい時(>100 fl)はまず巨赤芽球性貧血(ビタミンB12もしくは葉酸欠乏)を考える
- MCV > 130 flの場合は、巨赤芽球性貧血でほぼ間違いない
- 60歳以上の大球性貧血は、骨髄異形成症候群も考える
- MCV < 80 flと赤血球の大きさが小さい貧血を小球性貧血といいます。
- 小球性貧血となる代表的な病気には、鉄欠乏性貧血、二次性貧血(慢性炎症やがんなどによる貧血)、サラセミア(遺伝性の貧血)があります。
- 小球性貧血の原因は、赤血球数とフェリチンで見分けることができます。
赤血球数 | フェリチン | |
鉄欠乏性貧血 | ⬇︎ | ⬇︎ |
二次性貧血 | ⬇︎ | ⬆︎ |
サラセミア | ⬆︎ | ⬆︎ |
② 網赤血球


網赤血球は、成熟赤血球になる1段階前の幼若な赤血球です。網赤血球は、骨髄での赤血球の作られるスピードを反映します。
出血や溶血で赤血球が失われると、骨髄では不足した赤血球を急いで補充しようと頑張ります。その結果、網赤血球もたくさん作られます。網赤血球が増加している場合は「出血」もしくは「溶血」を考えます。
6-3. それでもわからないときは血液内科で骨髄検査
問診や血液検査では原因が分からず、内視鏡を含めた全身の精査を行っても原因が見つからない場合があります。この場合は血液疾患が貧血の原因であることが多く、血液の工場である骨髄の検査(骨髄検査)が必要になります。
骨髄検査とは?


- 骨髄検査とは、腰の骨に針を刺し、骨の中にある骨髄をとる検査です。
- 骨髄検査には、骨髄穿刺(せんし)と骨髄生検(せいけん)の2種類があります。
- 骨髄穿刺 … 骨髄の中の液体(骨髄液)をとる検査です。細胞の数や形、遺伝子検査や染色体検査などを行います。
- 骨髄生検 … 骨髄そのもの(骨髄組織)をとる検査です。骨髄をそのままの状態で観察できるので、細胞の密度や線維化などがわかります。
- 検査の際は局所麻酔で痛みを和らげますが、骨髄液を抜き取るときに特有の痛みがあります。
- 検査時間は10~20分程で終わり、検査後に30分間仰向けで安静にします。穿刺部位の血が止まったのを確認できれば、帰宅できます。
- 検査後は出血しやすいので、運動や入浴、アルコール摂取は控えましょう。
参考文献:厚生労働省の国民栄養・栄養調査報告書、時間軸で捉える血算 ~線で考える
最後まで読んでいただきありがとうございました!血液の病気についても解説しているので別の記事も参考にしていただけると幸いです。
お疲れ様でした。