【血液の病気で療養中の食事で気をつけること】専門医がわかりやすく解説

血液疾患治療中の食事の工夫|在宅療養をサポートする栄養ガイド

今回は、血液の病気で在宅療養中の患者さんからよく質問される「食事」について解説します。

血液の病気で治療しているとき、食事の内容はとても大切です。なぜなら、血液の細胞は食事から取り入れた栄養素から作られているからです。特に抗がん剤治療中は、吐き気や食欲不振がよく起こり、食事を摂るのが難しく感じることが多いと思います。

体力を維持し、治療を続けるためには、少しでも食べることが重要です。食べやすいものを見つけながら、できる限り口から食べることを心がけてみてください。

目次

1. 栄養バランスを整えるためのポイント

エネルギーとたんぱく質をしっかり摂ることが大切です。
体重の維持は栄養状態の指標の一つであり、健康な身体を保つためには、エネルギー(炭水化物・脂質)とたんぱく質をバランスよく摂取することが重要です。

  • 主食(ごはん、パン、麺類):身体のエネルギー源です。
  • 主菜(肉、魚、卵、大豆製品):身体を作る材料となります。
  • 副菜(野菜、きのこ、海藻、いも類):身体の調子を整える働きをします。

2. 食欲不振への対応

食欲がないときは、少量ずつ盛り付けたり、のどごしの良いゼリーやスープを選ぶのがおすすめです。
実際に患者さんからは『ゼリーやスープなら、少しずつでも食べられます』という声もいただいています。

匂いが気になるときは、食事を冷ましてから食べると、匂いが和らいで食べやすくなります。
『冷ましたおかげで少しずつ食べられるようになりました』といった声も聞きます。

主食も、おかゆやうどんなど消化に良いものを選んで、できるだけ負担を減らしてみましょう。

症状対応食事例
吐き気、嘔吐においがあまりないものを選ぶおにぎり、パン類、麺類、クラッカー類、プロセスチーズ、冷たいもの(冷製スープ、冷製茶漬け、冷製茶わん蒸し)
小ぶりな食事にする一品の量を調整
軟らかく、なめらかで口当たりのよい食品や飲み物を摂るヨーグルト、アイスクリーム、プリン、ゼリー、果物、果物缶詰、牛乳、豆腐料理、クリームスープ、マッシュポテト
咀嚼回数が多くなるものを避ける魚、肉類、野菜料理
甘すぎる食品や高脂肪食の食品を避ける濃厚流動食
食後すぐに横にならないこと
口内炎軟らかく、なめらかで、口当たりのよい、湿り気のある食品や飲み物を選ぶヨーグルト、ギリシャヨーグルト、アイスクリーム、プリン、ゼリー、牛乳、濃厚流動食、ゼリー状の栄養補助食品、クリームスープ
少量にするヨーグルトと飲料、栄養剤とアイスクリームなど一食の量の負担軽減
食形態の変更ペースト状・きざみ状
極端な温度差・刺激物に留意する熱湯、酢物、香辛料、酸味の強い果物、塩味や甘みの強い食品
口の乾燥食事と交互に水分を摂る
酸味のある料理酢の物、練梅、酸味の強い果物
軟らかく、なめらかで、口当たりのよい、湿り気のある食品や飲み物を選ぶヨーグルト、ギリシャヨーグルト、アイスクリーム、プリン、ゼリー、牛乳、果物缶詰、果物
汁気のある料理を摂ること汁気のある丼物、あんかけ料理、とろみのある料理、粥、クリームスープ、温かいスープ、マッシュポテト
味覚異常栄養価の高い食品、小ぶりな食事にすること味がはっきりしたものを選ぶ汁気のある丼物、麺類、濃厚流動食、栄養補助食品、ポタージュ、冷凍食品、パスタ、たこ焼き、ソース味の料理、パン類
はっきりとした甘みと酸味のもの果物、酢の物、酢飯、甘酢、ヨーグルト
苦く感じる場合は塩味を控え、酸味、旨味、香りを活用する食前にレモンやオレンジジュースなどの摂取で味覚刺激を促す。味のないサラダなどシンプルなもの
引用元:https://zouketsu.med.okayama-u.ac.jp/cms/wp-content/themes/zmo/assets/pdf/hand_book_dietitian_01.pdf

3. 口内炎や粘膜のケア

抗がん剤治療中には、口内炎や喉の炎症が起こることもあります。このようなときには、刺激の少ない食べ物を選びましょう。
例えば、柔らかく煮た野菜や、塩分や香辛料を控えた食事が良いです。ゼリーやプリンのような、喉に優しい食品もおすすめです。

また、口内炎が辛いときはうがい薬や塗り薬、痛み止めの薬があるので、我慢せずに看護師や先生に伝えましょう。

無理せず、自分に合った食べやすいものを少しずつ取り入れてみてください。

4. 食事が摂れないときの対応

どうしても食事が摂れないときには、経口栄養剤(例えば、エンシュア・リキッド、メイバランス、アイソカルなど)を検討してみましょう。

経口栄養剤は飲みやすく、必要な栄養素をバランスよく摂取することができます。薬局やネットでも販売されており、手軽に手に入れることができます。
また、味の種類も豊富で、自分の好みに合ったものを探すことができます。食事が難しいときでも、少しずつでも栄養を補うことが大切です。
どの栄養剤が適しているかについては、医師や管理栄養士に相談してみてください。

5. 食中毒対策

血液の病気を抱える患者さんにとって、日常生活での感染症対策はとても重要です。
特に化学療法を施行中の患者さんに関しては食中毒により通常よりも深刻な影響を及ぼす可能性があるため、先生の指示に従ってください。

1. 食品の選び方

食中毒を防ぐためには、まず食品の選び方が重要です。

  • 消費期限を確認
    • 食品の消費期限は必ず確認し、期限が過ぎたものは使用しないようにしましょう。特に乳製品や生鮮食品は細菌が繁殖しやすいので注意が必要です。
  • 生肉や生魚は避ける
    • 新鮮さに関わらず、生肉や生魚には食中毒を引き起こす細菌が潜んでいることがあります。特に刺身やレアステーキ、生卵は避け、しっかりと加熱調理されたものを選びましょう。
  • カビの生えているチーズは避ける
    • カマンベールやブルーチーズなどは、カビの摂取や吸入による感染の可能性もあるため
  • 生の木の実・ドライフルーツは避ける
    • 水分を含んでいるため、カビの発生や食品汚染の可能性があるため
  • 豆腐は殺菌表示のあるもの、または充填豆腐とする
    • 豆腐は栄養価が高く水分を多く含む食品であり、雑菌が繁殖しやすいため、取り扱いに注意が必要です。
  • 手作りの漬物・梅干は避ける
    • 衛生管理が不十分な場合、細菌の繁殖により食中毒のリスクが高まるため
  • 缶・ペットボトル・ブリックパックに入った飲み物は、開封後は冷蔵保存し24時間過ぎたら破棄する
    • 開封後、細菌が繁殖する可能性があるため

2. 食材の保存方法

食材を適切に保存することで、細菌の繁殖を抑えることができます。

  • 生鮮食品の分別保存
    • 生肉や魚は他の食材と分けて保存し、直接接触しないようにしましょう。専用の保存容器や袋に入れて冷蔵庫に入れることで、他の食材への細菌の付着を防ぐことができます。
  • すぐに冷蔵保存
    • 調理した食品は室温に長時間放置せず、早めに冷蔵庫に入れるようにしましょう。特に作り置き料理は2時間以内に冷蔵保存をすることを心がけましょう。

3. 調理時の注意点

調理中のちょっとした工夫で、食中毒のリスクを大きく減らせます。

  • 手洗いを徹底
    • 調理前、食材に触れる前、また生肉を扱った後はしっかり手を洗いましょう。手の衛生管理は食中毒予防の基本です。
  • まな板の使い分け
    • 生肉や魚を切るまな板と、野菜や調理済みの食品を切るまな板を使い分けることで、交差汚染を防ぐことができます。専用のまな板を用意するか、まな板を洗剤でしっかり洗ってから使用するようにしましょう。
  • しっかり加熱
    • 特に鶏肉やひき肉は中心部まで火が通るように調理しましょう。目安としては、75℃で1分以上の加熱が推奨されています。
    • 生の味噌は細菌などが混入している可能性があるため、加熱調理して食べましょう。

4. 外食時の注意

外食の際にもいくつかのポイントに注意することで食中毒リスクを減らせます。

  • 信頼できる店を選ぶ
    • 衛生管理がしっかりしている店を選びましょう。特に生ものを提供するお店は避けた方が安全です。
  • 熱いものを選ぶ
    • スープや煮込み料理など、しっかりと加熱された料理を選ぶことでリスクを減らせます。
  • 食べ残しを持ち帰らない
    • 持ち帰った食べ物は温度管理が難しく、細菌が繁殖しやすくなります。食べきれる量を注文するよう心がけましょう。

5. 食中毒の原因となる病原体

病原微生物特徴主な原因食品予防法
腸炎ビブリオ塩分3%前後で発育
真水・酸・寒さに弱い
魚介類真水でよく洗う
短時間でも冷蔵庫で保管
サルモネラ菌動物の体内に常在
川・湖にも広くいる
肉・卵・乳中心まで加熱する
(中心温度75℃以上、1分以上)
病原性大腸菌
(O-157など)
汚染された水や
調理者の手から付着
あらゆる食品手と食品をよく洗う
中心まで加熱する
(中心温度75℃以上、1分以上)
カンピロバクター動物の体内に常在肉・乳肉と他の食品を別々に保存
中心まで加熱する
(中心温度65℃以上、1分以上)
黄色ブドウ球菌人や動物の皮膚に常在
調理者の手から汚染
おにぎり
弁当・和菓子
素手で食品を握らない
化膿傷があるときは調理をしない
ウエルシュ菌動物の体内や土壌・下水に常在
酸素がなくても増殖
煮込み料理
(カレー、煮魚)
調理後はすぐに食べる
10℃以下または55℃以上で保存する
ノロウイルス秋冬に流行
調理者の手から汚染
カキなどの二枚貝調理の前に手を洗う
中心まで加熱する(中心温度85℃以上、1分以上)
リステリア4℃以下の低温や12%食塩濃度下でも増殖乳製品・食肉加工品
魚介類加工品
手と食品をよく洗う
中心まで加熱する
期限内に食べる
食中毒の原因となる細菌・ウイルスと予防法
引用元:https://zouketsu.med.okayama-u.ac.jp/cms/wp-content/themes/zmo/assets/pdf/hand_book_dietitian_01.pdf

まとめ

血液の病気を抱える患者さんにとって、日々の食事は体力を維持し、治療を乗り越えるための大切な要素です。治療の影響で食欲が低下することも多いですが、無理のない範囲で、少しずつ食べることを心がけましょう。
栄養バランスを意識しつつ、食べやすいものを選ぶことが大切です。抗がん剤治療中に起こりやすい食欲不振や口内炎にも対応できる食事の工夫を取り入れながら、自分に合った方法を見つけてみてください。

また、感染症対策も非常に重要です。食材の選び方、保存方法、調理時の注意点を守り、安心して食事を楽しめるようにしましょう。
困ったときには医師や管理栄養士に相談しながら、無理なく栄養を補っていくことがポイントです。

食事は、身体を支えるだけでなく、日々の生活に喜びをもたらす大切な時間でもあります。
自分に合った食べ方を見つけ、少しでも前向きに治療を続けられるようサポートできればと思います。

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