アルコール性肝硬変の患者さん「お酒が飲めないと生きてる意味がない」

アルコール性肝硬変

今回は訪問診療で担当させていただいている、アルコール性肝硬変末期の患者さんのお話です。

その患者さんは若い頃からお酒が大好きで、1日にウイスキーを水割りで500ml~1L程度飲んでいたようです。
数ヶ月前より徐々にお腹が腫れてきたため病院を受診すると、アルコール性肝硬変の末期と診断されました。お腹が腫れているのはお腹に水が溜まっているせいで、肝硬変の症状でした。
腹水でお腹が張って苦しいので、利尿剤を内服し2週間おきに約4Lの腹水を抜いていました。

お酒を飲むことが生き甲斐と語る彼は、消化器内科の主治医と繰り返し話し合った結果、少量の飲酒を嗜みながら訪問診療で出来る限りの肝硬変の管理を継続し、自宅で最期の時間を過ごすという道を選びました。
訪問診療で初めてお会いしたとき、患者さんは飲酒によって病状が進行し生活の質が低下し命に関わる可能性があることを十分に理解しているようでした。方針を再確認したうえで、在宅でも2週間おきの腹水穿刺をしながら、内服薬を調整することとしました。

目次

1. 節度ある適度な飲酒はアルコール20g

厚生労働省が推進する「健康日本21」には、節度ある適度な飲酒の指標として、1日あたりの平均純アルコールで約20gと提案されています。
たとえば、アルコール度数40~43%のウイスキーの20gは、およそ60mlに相当します。つまり、シングルで2杯、ダブルで1杯がウイスキーの適量の目安です。

お酒の純アルコール量約20gに相当する目安量
  • ビール:中瓶またはロング缶1本(約500ml)
  • 日本酒:1合(約180ml)
  • ワイン:グラス2杯弱(約200ml)
  • 焼酎(アルコール度数 25%):グラス1/2杯(約100ml)
  • 缶チューハイ(アルコール度数 7%):1本(約350ml)
  • ウイスキー(アルコール度数 40%):ダブル(約60ml)

2. アルコール性肝硬変の症状

アルコール性肝硬変の患者さんは飲酒をつづけることは、病状だけを考えると勧められるものではありません。
飲酒を続けることで肝硬変が進行し、以下の症状が悪化します。

1. 倦怠感や疲労感

肝臓の機能低下により、体全体にエネルギーが行き渡りにくくなり、倦怠感や慢性的な疲労を感じることが多くなります。

2. 黄疸(おうだん)

肝臓がビリルビンを処理できなくなると、皮膚や目の白い部分が黄色くなる黄疸が見られます。

3. 腹水

肝硬変が進むと、腹腔内に水が溜まります。これを腹水と言います。

4. 浮腫(むくみ)

足や足首に水分が溜まる浮腫が起こりやすくなります。

5. 食欲不振や体重減少

肝臓の機能低下により、食欲がなくなったり、体重が減少することがあります。

6. 出血しやすい・あざができやすい

肝臓の機能低下により、血液の凝固因子が不足し、出血やあざができやすくなります。

7. 脳症(肝性脳症)

肝臓が有害物質を処理できないため、これが脳に影響し、混乱、集中力低下、昏睡などの神経症状が出ることがあります。

8. 食道静脈瘤

肝臓への血流が滞ると、血液が他の静脈に流れ込み、特に食道や胃の静脈が膨れて破裂することがあります。これにより、吐血や便に血が混じることがあります。

9. 皮膚のかゆみ

肝機能障害により、体内の毒素が蓄積し、皮膚がかゆくなることがあります。

3. アルコール依存の患者さんのサポート

今回の患者さんはアルコールを楽しみながら残りの人生を歩むと決めましたが、アルコール依存の患者さんのサポートには以下のものが挙げられます。

  • 少しづつ飲酒量を減らす
  • 断酒会やアルコール依存症支援グループのコミュニティに参加
  • 他の生き甲斐をみつける

人生観、価値観は人それぞれです。
訪問診療では患者さんが主役です。患者さんと対話しながら、その人らしく生きられる道を一緒に探していきます。

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