関節リウマチで在宅療養中の患者さんの息子様より「母のお腹に内出血が出来てるんですが、これは何ですか?」とご質問がありました。
服をソッと捲り上げると、2×2cm大の紫色の内出血がヘソの上にありました。本人は認知症のためよくわかないとのことでした。
この患者さんは関節リウマチに対してトシリズマブ(アクテムラ)という皮下注射製剤を使っていたので、おそらく注射による内出血と考えました。
皮下注射は訪問看護師が実施していたため、息子様は気づくことができなかったようです。息子様は説明を聞いてご安心されていました。
リウマチ患者さんに内出血が起きる原因は様々ですが、主に以下の原因が考えられます。
1. 加齢
年齢を重ねると毛細血管がもろくなり、手や足に身に覚えのない内出血が起きます。これを老人性紫斑と言います。加齢に伴う変化のため、治療の必要はありません。
ただし、紫斑が短期間に多発したり、点状の紫斑や口や鼻などの粘膜の出血を伴う場合は他の原因も考えられるので内科やリウマチ科を受診しましょう。
2. 転倒や打撲
机や椅子などにぶつけてアザができているかもしれません。自分がぶつけたことを忘れている場合もあります。
押して痛む程度なら様子を見て良いでしょう。動かした時に痛んだり、何もしなくても痛む場合は骨折などの可能性があるので、整形外科を受診しましょう。
3. 薬の影響
内服している薬の影響で内出血がおこることがあります。
3-1. プレドニン(ステロイド)
プレドニン(ステロイド)は長期間内服すると皮膚が薄くなり、毛細血管を守る組織が脆くなるため、少しの圧迫でも出血しやすくなります。
対応としては、皮膚を清潔にして、保湿剤を使い肌を乾燥から守りましょう。
3-2. アザルフィジン(サラゾスルファピリジン)
アザルフィジン(サラゾスルファピリジン)の副作用に皮疹があります。内出血とは違いますが、2.3mmの赤いぶつぶつが全身に出ます。
多くは開始1ヶ月以内に現れます。
アザルフィジンによる皮疹を認めた場合はすぐにやめて皮膚科やリウマチを受診しましょう。
3-3. 抗血小板薬や抗凝固薬
別の病気に対して内服しているバイアスピリンなどの抗血小板薬やワーファリンやリクシアナなどの抗凝固薬が内出血の原因となっていることがあります。
基本的には経過を見て良いのですが、紫斑が短期間に多発したり、口や鼻などの粘膜の出血を伴う場合は抗血小板薬や抗凝固薬を処方している先生に相談しましょう。
4. 皮下注射の跡
メトトレキサートや生物学的製剤、プラリアなどの骨粗鬆症の皮下注射製剤は、時に注射部位に内出血を起こします。
基本的には自然に吸収されて消えるので問題ありません。
5. 悪性関節リウマチの発症
悪性関節リウマチは、関節リウマチの重症型です。特に関節破壊が急速に進行し、肺、心臓、血管などの全身の臓器にも深刻な影響を及ぼす病態です。
紫斑が多発することがあるので、診断時や治療時に紫斑を認めた際は主治医に報告しましょう。
6. 他の病気の合併
関節リウマチ以外の病気によって、内出血が起こることがあります。
関節リウマチに合併しやすい、異常なアミロイドタンパク質が体の組織や臓器に沈着し、正常な機能を妨げるアミロイドーシスという病気や血を固める血小板が減る特発性血小板減少性紫斑病などの血液の病気などがあります。
血液検査や組織を調べる検査が必要になるので、気になる場合は主治医に相談するとよいでしょう。
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