【生物学的製剤】リウマチ治療の頼れる味方!リウマチ科医がわかりやすく解説

生物学的製剤とは、関節の炎症を引き起こす物質や細胞にターゲットを絞って作用する、リウマチの薬です。リウマチの内服薬を使っても関節の痛みや腫れが残っている時に使われます。TNF阻害薬、抗IL-6抗体、T細胞活性化抑制薬の3種類があります。それぞれの薬の値段や注射頻度、患者さんの状態で決めていきます。

先生に生物学的製剤を勧められました。
自分で注射できるか不安だわ。

最初は不安かと思いますが、注射は難しくありませんよ。
生物学的製剤はリウマチの特効薬なので、高い効果が期待できます。

生物学的製剤とは、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を用いて生体が作る抗体を人工的に作り、薬として使用した新しいタイプの薬です。関節の炎症を引き起こす物質や細胞にターゲットを絞って作用することで、高い治療効果と関節破壊の抑制が期待できます。

この記事を読めば、生物学的製剤の特徴やメリット、デメリット、気をつけるポイントがわかると思います。

この記事のまとめ
  • 生物学的製剤とは、関節の炎症を引き起こす物質や細胞にターゲットを絞って作用する、リウマチの薬です。
  • 生物学的製剤は、リウマチの内服薬を使っても関節の痛みや腫れが残っている時に使われます。
  • 生物学的製剤には、TNF阻害薬抗IL-6抗体T細胞活性化抑制薬の3種類があります。
  • どの生物学的製剤を選ぶかは、薬の値段や注射頻度、患者さんの状態で決めていきます。
目次

1. 生物学的製剤とは?

生物学的製剤とは、化学的に合成した薬ではなく、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を用いて生体が作る抗体を人工的に作り、薬として使用した新しいタイプの薬です。バイオ(bio)とも呼ばれています。
関節の炎症を引き起こす物質や細胞にターゲットを絞って作用する、関節リウマチの治療薬です。

生物学的製剤は作るのに手間がかかるのでこれまでのリウマチ薬に比べて薬剤費は高価ですが、リウマチ発症早期に使うことで高い治療効果と関節破壊の抑制が期待できます。

生物学的製剤は高分子の蛋白質のため内服すると消化・分解されてしまうため、点滴あるいは皮下注射で投与します。

生物学的製剤の特徴
  • 高い治療効果
    • 寛解率 20〜40%
      • 寛解:関節の痛みがなく、生活に支障がない状態
  • 効果が早い
    • 薬によっては、開始したその日から効果を実感することも
  • 豊富なエビデンス
    • 関節破壊の抑制と生命予後の改善
      • 生命予後:あとどのくらい元気でいられるか?
  • 肝臓、腎臓に負担がない
    • もともと体内にあるタンパク質とほぼ同じ構造
  • 皮下注射もしくは点滴
    • タンパク質から出来ているので、内服すると消化・分解されてしまう
  • 値段は少し高い
    • 月 2〜4万程度(3割負担)

2. 生物学的製剤はいつ、どんな時に始める?

リウマチと診断されると、関節の炎症を抑えるためにメトトレキサート(MTX)などのリウマチ薬が開始されます。しかし、MTXだけでリウマチが良くなる人は約半数程度で、2人に1人と多くありません。治療をしていても関節の痛みや腫れが長期間続くと、骨が破壊され関節が変形してしまいます。

そこで、現在内服しているリウマチ薬だけでは治療効果が不十分な場合には、生物学的製剤の導入を考えます。
生物学的製剤は、リウマチの症状が進行してから開始するよりも、炎症による症状が強い初期段階で開始した方が効果が高いと知られています。よって、リウマチが進行する前のなるべく早い時期に開始した方が良いでしょう。

生物学的製剤の開始基準

メトトレキサートなどの従来型のリウマチ薬を3~6ヶ月以上継続しても、関節の痛みや腫れが残っている場合

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4. 生物学的製剤を始める前に

生物学的製剤で注意が必要な副作用は感染症です。特に、結核を含めた細菌感染には注意が必要です。

重篤な感染症でもっとも頻度が多いのは肺炎です。その他の感染症として、風邪などのウイルス感染症、蜂窩織炎や帯状疱疹などの皮膚の感染症などがあります。発熱、咳や痰、皮膚が赤くなる、皮膚がピリピリ痛いなどの症状があれば早めに医療機関に相談、受診しましょう。

特に高齢、肺の病気を合併している、ステロイドを内服している、身体機能の障害が強い、糖尿病の治療中、などがあると肺炎など感染症のリスクが高くなるといわれています。

生物学的製剤の開始する前に、血液検査や胸部レントゲン(場合によってはCT検査)で結核や肝炎ウイルス、真菌のチェックを行い、感染症やそのリスクがないかを評価します。

生物学的製剤を始める前のチェック項目

  • 免疫力のチェック
    • 白血球数>4000 /μL、リンパ球数>1000 /μL 
  • 感染症のチェック
    • B、C型肝炎ウイルス
    • 結核やカビの感染
  • 肺の病気のチェック
    • 間質性肺炎や結核

3-1. 禁忌:使わないほうがいい場合

活動性の感染症がある場合には、生物学的製剤を投与することはできません。
以下に当てはまる人は生物学的製剤の使用を控え、別のリウマチ薬を使う方が安全でしょう。

治療が必要な感染症が見つかれば、感染症の治療を優先します。

生物学的製剤の禁忌

  • 重篤な感染症(結核などの肺炎や急性B型肝炎など)
    • 感染症が悪化する可能性があるため
  • 重い心不全
    • 心不全が悪化する可能性があるため(TNF阻害薬のみ)
  • 脱髄疾患
    • 脱髄疾患が悪化する可能性があるため(TNF阻害薬のみ)
  • 生ワクチン接種3〜6ヶ月以内
    • その病気を発症してしまう可能があるため

3-2. 慎重投与:感染症の予防が必要な場合

生物学的製剤の投与で注意する感染症

  • 結核
  • 慢性B型、C型肝炎ウイルス
  • ニューモシスチス(カビ)

生物学的製剤を使うことで免疫力が低下し、過去にかかって今は落ち着いている感染症が暴れだすことがあります。これを再活性化といいます。再活性化が問題となる代表的な病原菌は、結核、B型肝炎、C型肝炎です。

また、普段は問題とならない菌の感染症にかかることがあります。これを日和見感染といいます。日和見感染症が問題となる代表的な病原菌は、ニューモシスチスです。

このような場合は、感染症のリスクに応じて結核やニューモシスチス肺炎の治療薬を予防的に投与することがあります。

4. 生物学的製剤の種類

スクロールできます
エンブレル
(エタネルセプト)
ヒュミラ
(アダリムマブ)
シムジア
(セルトリズマブ)
シンポニー
(ゴリムマブ)
ナノゾラ
(オゾラリズマブ)
アクテムラ
(トシリズマブ)
ケブサラ
(サリルマブ)
オレンシア
(アバタセプト)
TNF阻害薬TNF阻害薬TNF阻害薬TNF阻害薬TNF阻害薬抗IL-6抗体抗IL-6抗体T細胞活性化抑制
注射間隔1週2週2週 or 4週4週4週2週(1週も可)2週1週
値段
(月額、3割負担)
約2万円約2.5万円約3.5万円約3.5万円約3.5万円約2万円約3万円約3.5万円
即効性
妊娠、授乳中××××××
生物学的製剤の比較表

生物学的製剤には、作用する炎症物質や細胞が異なる3種類のタイプがあります。
TNFという炎症物質を抑えるTNF阻害薬、IL-6という炎症物質を抑える抗IL-6抗体、T細胞の活性化を抑えるT細胞活性抑制薬があります。

どの生物学的製剤も、メトトレキサートを併用した方が効果が高まるので、可能ならメトトレキサートを継した方が良いでしょう。

4-1. TNF阻害薬

TNF阻害薬は、腫瘍壊死因子(TNF)という分子と結合してその作用を抑制する薬です。

TNF阻害薬は他の2種類と比較し、効果が早いという特徴があります。一方で、長期間使用していると効果が弱くなる二時無効が生じることがあります。
生物学的製剤の中でも最も種類が多いのも特徴です。どれも効果に大きな違いはありませんが、投与間隔や費用に違いがあります。

① エンブレル®︎(エタネルセプト:ETN)

こんな人にオススメ!
  • 値段を抑えたい
  • 妊娠を考えている
  • 高齢、肺の病気を合併などの感染症のリスクがある
  • 特徴
    • 中和抗体の産生が少なく、安定した効果
      • 中和抗体:生物学的製剤に対する抗体のことで、薬の効果が弱くなる原因になる
    • 半減期が4日間と最も短いため、感染症のリスクが高い人(高齢者、肺に病気を合併しているなど)にも使いやすい
    • 胎盤通過や乳汁移行が少ないため、妊婦さんや授乳中にも安心して使える
    • デメリットは、注射の頻度が週1回と多い
  • 効果発現
    • 早ければ2週間、遅くとも1〜2ヶ月
  • 薬の値段
    • 月2万円程度(3割負担)
  • 副作用
    • アレルギー反応や感染症など
  • 使い方
    • 1本(50mg)を週に1回、皮下注射

参考:エタネルセプトBS「MA」で治療中/治療予定の患者さんへ自己注射動画はこちら

② ヒュミラ®︎(アダリムマブ:ADA)

こんな人にオススメ!
  • 値段を抑えたい
  • 特徴
    • デメリットは基本MTX併用が必要
      • MTXを併用しないと、中和抗体が高率(45%)に認められる
  • 効果発現
    • 早ければ2週間、遅くとも1〜2ヶ月
  • 薬の値段
    • 月2万5千円~5万程度(3割負担)
  • 副作用
    • アレルギー反応や感染症など
    • 注射部反応、皮疹
      • 抗ヒスタミン薬内服やステロイド外用で対応可能
  • 使い方
    • 1本(40mg)を2週に1回、皮下注射
    • 効果不良時は2本(80mg)に増量可

参考:アダリムマブBSで治療中/治療予定の患者さんへ自己注射動画はこちら

③ シムジア®︎(セルトリズマブぺゴル:CZP)

こんな人にオススメ!
  • 妊娠を考えている
  • 早く痛みを軽くしたい
  • MTXを併用できない
  • 皮下注射の頻度をなるべく少なくしたい
  • 特徴
    • MTXを併用しなくても十分効果がある
    • 胎盤通過や乳汁移行が少ないため、妊婦さんや授乳中にも安心して使える
    • デメリットは値段が高い
  • 効果発現
    • 速い、即日に効果を実感することもある(平均1〜2ヶ月)
  • 薬の値段
    • 月3.5万程度(3割負担)
  • 副作用
    • アレルギー反応や感染症など
  • 使い方
    • 初回、2週間後、4週間後は1回2本(400mg)を皮下注射し、その後は1回1本(200mg)を2週間毎に皮下注射
    • 症状が安定したら1回2本(400mg)を4週間毎に延長も可能

参考:シムジアで治療中/治療予定の患者さんへ自己注射動画はこちら

④ シンポニー®︎(ゴリムマブ:GLM)

こんな人にオススメ!
  • 早く痛みを軽くしたい
  • 皮下注射の頻度をなるべく少なくしたい
  • MTXを併用できない
  • 特徴
    • MTXを併用しなくても十分効果がある
    • 二次無効が生じにくく、安定した効果が持続
    • デメリットは値段が高い
  • 効果発現
    • 速い、即日に効果を実感することもある(平均1〜2ヶ月)
  • 薬の値段
    • 月3.5〜7万程度(3割負担)
  • 副作用
    • アレルギー反応や感染症など
  • 使い方
    • 1回1本(50mg)を4週間毎に皮下注射
    • MTX非併用例では効果不良時、2本(100mg)に増量可

参考:シンポニーで治療中/治療予定の患者さんへ

⑤ ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)

こんな人にオススメ!
  • 早く痛みを軽くしたい
  • 皮下注射の頻度をなるべく少なくしたい
  • MTXを併用できない
  • 特徴
    • MTXを併用しなくても十分効果がある
    • 分子量が最も小さく(1/4程度)、組織への移行性が高い
    • デメリットは値段が高い
  • 効果発現
    • 速い、即日に効果を実感することもある(平均1〜2ヶ月)
  • 薬の値段
    • 月3.5万程度(3割負担)
  • 副作用
    • アレルギー反応や感染症など
  • 使い方
    • 1回1本(30mg)を4週間毎に皮下注射

4-2. 抗IL-6抗体

引用元:https://pat.actemra.jp/ra/documents/act_ra_handbook.pdf

抗IL-6抗体は、IL-6(インターロイキン-6)のレセプターに対する薬です。

効果の発現はTNF阻害薬と比較すると遅いですが、メトトレキサートの併用が無くても二次無効が起こりにくく効果が発揮しやすい薬です。

① アクテムラ®︎(トシリズマブ:TCZ)

こんな人にオススメ!
  • 値段を抑えたい
  • TNF阻害薬が効かない
  • MTXを併用できない
  • リンパ増殖性疾患の発症後
  • 特徴
    • MTXを併用しなくても十分効果がある
    • 二次無効が生じにくく、安定した効果が持続
    • リンパ増殖性疾患発症後の人では最も高い継続率
      • リンパ増殖性疾患:MTXなどの薬の使用中に発症する血液の病気
    • デメリット
      • 効果が現れるのに時間がかかる
      • 血液検査でCRPが陰転化するため、感染症の発見が遅れる可能性
  • 効果発現
    • ゆるやか、早くて1ヶ月、平均して3ヶ月
  • 薬の値段
    • 月2~4万円程度(3割負担)
  • 副作用
    • 血球減少(白血球、血小板)、コレステロール増加、間質性肺炎、肝機能異常、消化管穿孔
      • 大腸憩室をお持ちの方は腸管穿孔のリスクがあるため、避けた方が良いでしょう
    • アレルギー反応や感染症など
  • 使い方
    • 1回1本(162mg)を2週間毎に皮下注射
    • 効果不良時は1週間毎に短縮可
    • 点滴なら4週間毎

参考:アクテムラで治療中/治療予定の患者さんへ

② ケブサラ®︎(サリルマブ:SAR)

こんな人にオススメ!
  • アクテムラが効かなくなった
  • TNF阻害薬が効かない
  • MTXを併用できない
  • 特徴
    • アクテムラより中和抗体の出現が少なく、アクテムラが効かなくなった人にも効果がある
    • MTXを併用しなくても十分効果がある
    • 二次無効が生じにくく、安定した効果が持続
    • デメリット
      • 効果が現れるのに時間がかかる
      • 血液検査でCRPが陰転化するため、感染症の発見が遅れる可能性
  • 効果発現
    • ゆるやか、早くて1ヶ月、平均して3ヶ月
  • 薬の値段 
    • 月2.5~3万円程度(3割負担)
  • 副作用
    • 血球減少(白血球、血小板)、コレステロール増加、間質性肺炎、肝機能異常、消化管穿孔
      • 大腸憩室をお持ちの方は腸管穿孔のリスクがある、避けた方が良いでしょう
    • アレルギー反応や感染症など
  • 使い方
    • 1回1本(200mg)を2週間毎に皮下注射
    • 症状改善後は1回150mgに減量可

参考:ケブサラで治療中/治療予定の患者さんへ

4-3. T細胞活性化抑制薬

引用元:https://file.bmshealthcare.jp/bmshealthcare/pdf/patient/ORIV-patient-RA.pdf?date=20230103

T細胞活性化抑制薬は、抗原提示細胞とT細胞間の共刺激シグナルを阻害し、リウマチの発症に関与するT細胞の活性化を抑制する薬です。

効果の発現はTNF阻害薬と比較すると遅いですが、メトトレキサートの併用が無くても二次無効が起こりにくく効果が発揮しやすい薬です。

T細胞活性化抑制薬は自然免疫ではなく獲得免疫を抑えるので、他の生物学的製剤と比べ感染症のリスクが低いとされており、高齢者のリウマチ治療に使われる傾向があります。

① オレンシア®︎(アバタセプト:ABT)

こんな人にオススメ!
  • 高齢、肺の病気などの感染症のリスクがある
  • TNF阻害薬が効かない
  • MTXを併用できない
  • 特徴
    • MTXを併用しなくても十分効果がある
    • 中和抗体の産生が少なく、安定した効果
    • 重症感染症のリスクが最も少ないため、高齢者や肺の病気を合併している人にオススメ
    • デメリットは効果が現れるのに時間がかかる
    • プログラフ®︎(タクロリムス)との併用は安全性は確立されてない
  • 効果発現
    • ゆるやか、早くて1ヶ月、平均して3ヶ月
  • 薬の値段
    • 月3.6万円程度(3割負担)
  • 副作用
    • アレルギー反応や感染症など
  • 使い方
    • 1回1本(125mg)を1週間毎に皮下注射
    • 点滴なら4週間毎に投与

参考:オレンシアで治療中/治療予定の患者さんへ

5. 生物学的製剤の選び方

生物学的製剤の効果はどの薬も大きく変わりません。よって、どの生物学的製剤を選択するかは、注射頻度、費用、即効性などの各薬剤の特徴やメトトレキサートの内服の有無、妊娠の希望などで決めています。

また、一度使用してみて効果が不十分だったり、副作用が出た場合は他の薬剤に変更することも可能です。

主治医の先生とよく相談しながら、自分に合った生物学的製剤を見つけましょう。

生物学的製剤の選び方
  • とにかく値段を抑えたい
    • エタネルセプトBS、アダリムマブBS、アクテムラ
  • 痛みをなるべく早く良くしたい
    • シムジア、シンポニー、ナノゾラ
  • 注射の頻度を少なくしたい
    • シムジア、シンポニー、ナノゾラ
  • MTXを併用できない(間質性肺炎や腎機能、肝機能低下の方など)
    • アクテムラ、オレンシア、シンポニー(100mg)、ナノゾラ
  • 妊活中や妊娠中、授乳中
    • エタネルセプトBS、シムジア
  • 高齢、肺の病気を合併、重篤な感染症の既往などの感染症のリスクが高い
    • オレンシア、エタネルセプトBS

6. Q&A:よくある質問

費用はどのくらいかかりますか?

医療保険の3割負担で月に2~4万円となる場合が多いです。


医療費の負担が減る高額療養費制度が適応される可能性もありますので、現在加入されている健康保険組合やお住まいの市区町村にお問い合わせください。
詳しくは厚生労働省の「高額療養費制度を利用する皆様へ」をご確認ください。

途中で止めること(ドラッグフリー)はできますか?

止めることは可能です。

ただし、生物学的製剤をやめると、リウマチが悪くなる可能性があります。止めるにあたっては、リウマチがしばらくの間、寛解状態であることが望ましいとされています。また、生物学的製剤を完全にやめるよりも、投与量を減らしたり、投与間隔を長くしたりしながら徐々に中止していく方法がよく行われています。

生物学的製剤の中止に関しては、上記について理解したうえで、主治医とよく相談する必要があります。

生物学的製剤の種類を変更することはありますか?

生物学的製剤の効果が不十分な場合や副作用を認めた場合は、別の生物学的製剤に変更することがあります。
どの生物学的製剤がその患者さんに最も効果があるのかは使ってみなければわかりません。通常は3カ月ほど使用しても効果が不十分であれば、別の生物学的製剤に切り替えます。

また、使用していくうちに効果が弱くなってしまう(二次無効)ことがあります。これは、カラダの免疫システムが生物学的製剤を異物として捉えて排除してしまうためです。この場合も生物学的製剤の切り替えが必要となります。

妊娠・出産を考えています。妊娠中は使用できますか?

妊娠や授乳中のリウマチ患者さんには、生物学的製剤の使用が積極的に推奨されています。

現在のところ、非常に高い安全性のエビデンスがある生物学的製剤としては「エンブレル」「シムジア」があげられます。

ワクチンは接種していいの?

メトトレキサートや生物学的製剤などの免疫抑制剤を使用中のリウマチ患者さんには、ワクチンによる予防接種が積極的に推奨されています。
肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチン、帯状疱疹ワクチンなどの予防接種を検討しましょう。

注射の痛みを和らげる方法はありますか?

以下の3つの方法で皮下注射の痛みを和らげることができます。ぜひ試してみてください。

①注射部位を保冷剤などで前もって冷やす
②注射の30分前に薬を冷蔵庫から取り出し、注射薬を常温に戻す
③シリンジタイプでゆっくり注入する

参考文献


最後まで読んでいただきありがとうございました!リウマチや血液の病気などの別の記事も参考にしていただけると幸いです。

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つか
医師・医学博士。
専門はリウマチ膠原病内科と血液内科です。
これまで大学病院や訪問診療で、関節リウマチと血液疾患の患者さんの診断・治療・自宅療養のサポートをして参りました。
リウマチと血液疾患で悩む患者さんに、笑顔と安心を届けることが私の使命と考えています。
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