【リウマチの治療(総論)】リウマチ科医が治療薬についてわかりやすく解説

リウマチに使われる治療薬は、リウマチそのものを抑える薬(抗リウマチ薬)と炎症や痛みを抑える薬に分けられる。抗リウマチ薬には従来型、生物学的製剤、JAK阻害薬があります。炎症や痛みを抑える薬は、ステロイドとNSAIDsがあります。薬をうまく組み合わせることで、リウマチの寛解を目指します。

リウマチの薬って色々あるんですね。
どうやって使い分けているのかな。

リウマチの状態や患者さんの年齢や持病、治療の続けやすさなどを総合的に判断して決めています。

リウマチの治療薬はたくさんの種類があり、大きく分けるとリウマチの進行を抑える薬(抗リウマチ薬)炎症や痛みを抑える薬(補助薬)に分けられます。同じリウマチの治療でも、患者さんによって使う薬はそれぞれ異なります

この記事のまとめ
  • リウマチの治療薬は、リウマチそのものを抑える薬(リウマチ薬)炎症や痛みを抑える薬に分けられる。
  • リウマチ薬には従来型、生物学的製剤、JAK阻害薬があり関節破壊を抑える効果があります。
  • 炎症や痛みを抑える薬は、副腎皮質ステロイドNSAIDsがあります。
  • 薬をうまく組み合わせることで、リウマチの寛解を目指します
目次

1. リウマチの進行を抑える薬

リウマチに対して、関節の炎症や骨の破壊を抑える薬をDisease modifying anti rheumatic drugs:DMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)といいます。リウマチを治療する上で必ず使う薬です。
DMARDsは従来型(csDMARDs)JAK阻害薬(tsDMARDs)生物学的製剤(bDMARDs)に分けられます。

投与経路は主に、内服皮下注射があります。

従来型のリウマチ薬(csDMARDs)

JAK阻害薬(tsDMARDs)

1-1. 従来型のリウマチ薬

従来型のリウマチ薬(csDMARDs)とは、関節リウマチの炎症の原因である、免疫の異常を改善する薬です。昔から使われている歴史のある薬で、リウマチと診断されたらまず初めに使う薬です。

現在のリウマチ治療の主役は、メトトレキサート(MTX)です。血液検査やレントゲン検査で大きな問題がなければ、MTXで治療を開始します。MTXが使えない場合は、MTX以外のcsDMARDsを使って治療を開始します。

現在は主に、以下の5種類が使われます。

主に使われるcsDMARDs
  • リウマトレックス®︎(メトトレキサート:MTX)
  • アザルフィジン®︎(サラゾスルファピリジン:SASP)
  • ケアラム®︎(イグラチモド:IGU)
  • プログラフ®︎(タクロリムス:TAC)
  • リマチル®︎(ブシラミン:BUC)
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1-2. JAK阻害薬

JAK阻害薬(じゃっくそがいやく)とは、細胞の内側にあるJAK(ジャック)という酵素の働きを抑えることで、関節の炎症や破壊を抑える薬です。リウマチの特効薬である、生物学的製剤と同等の高い効果があります。

JAK阻害薬は、 MTXなどのcsDMARDsや生物学的製剤を使ってもリウマチが抑えられない場合に使う薬です。

現在は、主に以下の5種類が使われています。

主に使われるJAK阻害薬
  • ゼルヤンツ®︎(トファシチニブ:TOF)
  • オルミエント®︎(バリシチニブ:BAR)
  • スマイラフ®︎(ペフィシチニブ:PEF)
  • リンヴォック®︎(ウパダシチニブ:UPA)
  • ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)
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1-3. 生物学的製剤

生物学的製剤とは、関節の炎症をおこすサイトカイン(TNF-α、IL-6など)を抑えることで、ことで、関節の炎症や破壊を抑える薬です。

治療の早い段階で導入することにより、高い治療効果が期待できるリウマチの特効薬です。従来型の薬(csDMARDs)に比べ効き目がはやく、効果が高いという特徴があります。MTXなどのcsDMARDsを使ってもリウマチが抑えられない場合に使う薬です。皮下注射の薬ですが、慣れればお家で自分で注射することができます。

現在は、主に以下の8種類が使われています。

主に使われる生物学的製剤
  • TNF阻害薬
    • エンブレル®︎(エタネルセプト:ETN)
    • ヒュミラ®︎(アダリムマブ:ADA)
    • シンポニー®︎(ゴリムマブ:GLM)
    • シムジア®︎(セルトリズマブペゴル:CZP)
    • ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)
  • IL-6阻害薬
    • アクテムラ(トシリズマブ:TCZ)
    • ケブサラ(サリルマブ:SAR)
  • T細胞選択共刺激調整薬
    • オレンシア®︎(アバタセプト:ABT)
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2. 炎症や痛みを抑える薬

リウマチ薬は関節の炎症や骨の破壊を抑えるリウマチ治療のメインの薬ですが、効果が現れるのに一定の時間がかかります。また、治療中に感じる関節の痛みに対して即効性のある薬ではありません。

副腎皮質ステロイドやNSAIDsは、リウマチ薬の効果が現れるまでの期間や関節痛に対して頓用で使用することができる薬です。リウマチ薬と併用することで、リウマチ治療を円滑に進めることが可能になります。

2-1. 副腎皮質ステロイド

副腎皮質ステロイドは、関節の炎症や痛みを抑えることで、関節痛の速やかな改善と関節破壊を抑える効果があります。
即効性があるため、リウマチ薬の効果が現れるまでの治療の早い段階で使われることが多いです。

一方で、長期に内服すると骨粗鬆症や感染症などの副作用が問題になります。可能であれば徐々に減量・中止、どうしても必要な場合は極少量(5mg/日以下)に減量します。

現在、リウマチ治療で主に使われる副腎皮質ステロイドは以下の2種類です。

リウマチ治療で使われる副腎皮質ステロイド
  • プレドニン®︎(プレドニゾロン)
  • メドロール®︎(メチルプレドニゾロン)
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2-2. NSAIDs(鎮痛薬)

NSAIDs(鎮痛薬)は、関節痛を和らげる即効性のある薬です。時に感じる関節痛に対して頓用で使うことができます。
また、リウマチ発症初期で関節痛が辛い時は定期薬としても使われます。しかし、NSAIDsには関節破壊を抑える効果はないので、リウマチ薬との併用が原則です。

NSAIDsには色々な種類がありますが、以下の薬がよく使われています。

リウマチ治療でよく使われる鎮痛剤
  • ロキソニン®︎(ロキソプロフェン)
  • セレコックス®︎(セレコキシブ)
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参考文献


最後まで読んでいただきありがとうございました!リウマチや血液の病気などの別の記事も参考にしていただけると幸いです。お疲れ様でした。

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つか
医師・医学博士。
専門はリウマチ膠原病内科と血液内科です。
これまで大学病院や訪問診療で、関節リウマチと血液疾患の患者さんの診断・治療・自宅療養のサポートをして参りました。
リウマチと血液疾患で悩む患者さんに、笑顔と安心を届けることが私の使命と考えています。
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