【リウマチ因子:RF】健診でRF陽性と言われたら? リウマチ科医がわかりやすく解説

RFは自分自身に対する抗体、自己抗体です。健常者でもリウマチ以外の他の病気でも陽性になります。リウマチ患者さんの5人に1人はRF陰性です。RFの結果だけでなく、身体診察や関節エコー、血液検査でリウマチかどうかを総合的に判断します。

リウマチ因子が陽性だから、リウマチなの?

リウマチ因子が陽性というだけでは、リウマチの診断にはなりませんよ。
一度、リウマチ科で調べてもらうと安心ですね。

リウマチ因子(Rhumatoid Factor:RF)はリウマトイド因子とも呼ばれ、免疫グロブリンであるIgGに対する抗体です。リウマチを疑った時に、最も一般的に測定される血液検査項目で、健診や人間ドックの検査項目に含まれていることもあります。

RFはリウマチの診断に用いられますが、RFが陽性ならリウマチ」とは限りません

この記事のまとめ
  • RFは、自分自身のタンパク質に対する抗体(自己抗体)です。
  • RFは、健常者でもリウマチ以外の他の病気でも陽性になります。
  • リウマチ患者さんの5人に1人はRF陰性です。
  • リウマチの診断は、RFの結果だけでなく、関節の診察、血液検査、画像検査で総合的に判断します。
目次

1. リウマチ因子(RF)とは

RF:Rhumatoid Factor(リウマチ因子)はリウマトイド因子とも呼ばれ、免疫グロブリンであるIgGに対する抗体です。

免疫グロブリンとは、異物が体内に入った時に排除するように働く「抗体」の機能を持つタンパク質のことです。血液や体液の中に存在し、病原体の働きを止める大きな役割を担っています。免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5つの種類があります。RFはIgGに対する抗体、つまり自分自身のタンパク質に対する抗体(自己抗体)です。

RFはリウマチを疑った時に、最も一般的に測定される血液検査項目です。また健診や人間ドックの検査項目に含まれていることもあります。

2. 「RFが陽性=リウマチ」ではない!

では、RFが陽性の場合はリウマチなのでしょうか?

結論からいうと、「RFが陽性だからリウマチ」というわけではありません。また、「RFが陰性だからリウマチではない」とも言えません

リウマチ因子(RF)の特徴
  1. 健康な人でも、約10%がRF陽性
  2. リウマチ患者さんの約80%がRF陽性
  3. リウマチの発症初期では、約50%しかRF陽性にならない
  4. RF陽性は骨破壊の進行が速い
  5. リウマチ以外の病気でもRF陽性になる

① 健康な人でも、約10%がRF陽性

リウマチではない健康な人でも、約10%の方がRFが陽性になります。

さらに、RFは年齢とともに陽性率が上昇する傾向にあり、70歳以上の高齢者では約25%(4人中1人)がRF陽性となります。
つまり、「RF陽性だからリウマチ」ではないので、健康診断などでRFが陽性だったとしても、関節の症状がなければ心配はいりません。

関節の痛みや腫れ、手足のこわばりなど、気になる症状があれば、一度病院で調べてもらいましょう。

リウマチ患者さんの約80%がRF陽性

リウマチに対するRFの感度は70~80%、特異度は80〜90%ほどです。わかりやすく言うと「RFはリウマチ患者さんの約80%が陽性になり、リウマチではない人も約10%が偽陽性となる」ということです。

つまり、リウマチ患者さんの多くはRF陽性ですが、約20%(10人中2人)はRF陰性です。「RFが陰性だからリウマチではない」とは言えないため、関節の症状を認めている場合は、抗CCP抗体を追加で確認したり、超音波やレントゲン、MRIなどの画像検査で詳しく調べてもらいましょう。

リウマチの発症初期では、約50%しかRF陽性にならない

RFはリウマチ患者さんの約80%が陽性になりますが、リウマチの発症初期では約50%(2人中1人)しか陽性になりません。つまり、RFの結果だけでは初期のリウマチを見落としてしまう可能性があります。

リウマチの治療は、なるべく発症の初期段階で始めた方が効果が高いと報告されています。RFが陰性でも、抗CCP抗体を追加で確認したり、超音波やレントゲン、MRIなどの画像検査で詳しく調べてもらいましょう。

④ RF陽性は骨破壊の進行が速い

予後不良因子とは、リウマチの進行が速く関節の破壊や変形が起こりやすいことを意味します。RF陽性(特に高値)は抗CCP抗体陽性とともに、リウマチの予後不良因子の一つです。

関節の破壊や変形を予防するために、生物学的製剤やJAK阻害薬などの新しいリウマチ薬が必要になるかもしれません。

抗CCP抗体について

抗CCP抗体とは、RFと同様にリウマチで認められる自己抗体です。
リウマチを診断する時に必ずチェックする項目で、RFより精度の高い検査です。

2-5. リウマチ以外の病気でもRF陽性になる

RFは感度は比較的高いのですが、特異度は決して高くありません。わかりやすく言うと、RFはリウマチ以外の病気でも陽性になることがあります。

RFが偽陽性になる病気には、他の膠原病や感染症、肝疾患がんなどがあります。
特に、シェーグレン症候群はRFが高値になりやすいので、目や口の渇き、虫歯がよくできるかなどの症状がないかチェックしてます。
また、感染性心内膜炎の細菌感染や肝炎ウイルスなどのウイルス感染症もRFが陽性になることがあります。これらの感染症は関節痛を起こすことがあるのでリウマチと間違いやすく注意が必要です。

RF陽性率
膠原病
シェーグレン症候群75〜95%
混合性結合組織病50~60%
全身性エリテマトーデス15~35%
全身性強皮症20~30%
多発性筋炎・皮膚筋炎20%
血管炎5~20%
乾癬性関節炎<15%
感染症
感染性心内膜炎40%
B型、C型肝炎25~76%
ウイルス感染症10〜20%
結核15%
梅毒8~37%
その他
サルコイドーシス5~30%
肝硬変25%
5〜25%
リウマチ以外のRF陽性率
引用元:Dis Markers. 2013; 35(6): 727-734

3. RF陽性の時はリウマチ科へ

では、健診でRFが陽性の場合、どうしたらいいのでしょうか?

RF陽性の場合の対応
  • 関節の症状がない場合
    • 診察や画像検査で関節の炎症が無いことを確認します。現段階では「リウマチではない」と安心して良いでしょう。ただし、RF陽性になる他の病気が隠れていないかを確認する必要があります。
  • 関節の症状がある場合
    • リウマチを含めた膠原病を調べるために問診や診察、血液検査、画像検査で確認します。

リウマチだけでなく、他の膠原病や病気の知識のあるリウマチのスペシャリストリウマチ科、膠原病内科を受診すると安心ですね。

参考文献


最後まで読んでいただきありがとうございました!リウマチや血液の病気などの別の記事も参考にしていただけると幸いです。お疲れ様でした。

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つか
医師・医学博士。
専門はリウマチ膠原病内科と血液内科です。
これまで大学病院や訪問診療で、関節リウマチと血液疾患の患者さんの診断・治療・自宅療養のサポートをして参りました。
リウマチと血液疾患で悩む患者さんに、笑顔と安心を届けることが私の使命と考えています。
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